「レイコの青春」 7~9
その昔、人々は力を合わせて助け合い、
身を寄せ合いながら暮らしてきました。
出産や結婚、葬式や祝い事、祭などの「晴れの日」などはもちろん、
日々の生活をする中で、必然的に多くの人が集う機会が此処には
数多くありました。
その時々に応じて空間が演出をされました。
襖を閉めればそこは独立をした個室に変わり、襖を開ければ
大広間へと変わるのが、こうした古式な民家の造り方の特徴です。
その都度、適切な空間を演出できた日本家屋の構造は、
まさに先人たちの知恵であり、日本的文化の独特な象徴そのものでした。
縁側は、日本家屋の持っている、もっとも特筆をすべき独特な構造物です。
家の内側でもなければ、外側でもありません。
空間を仕切るのではなく、内に居ながら外を感じる構造で、
自然との一体感を大切にする、日本文化の極みともいえる構造物です。
縁側は、それはまた部屋でもあり、同時に廊下でもあるのです。
時としては、玄関となり、庭の一部ともなり、さらには、
室内でもあり屋外でもある、独特な存在です。
ひととおり見終わった瞬間に、
「これだ」という感想が、めいめいの顔には産まれていました。
昭和47年(1972年)の春、桐生の繁華街でうぶ声を上げた、
ゼロ歳児の無認可保育所、『なでしこ』は、こうしてさらに、
桐生川の川辺で見つけた古い民家で、さらに
新しい一歩を踏みだすことになりました。
10へつづく
作品名:「レイコの青春」 7~9 作家名:落合順平