【サンプル】【創作】イメージ
きっと天の神様がよく話し合えと言っているのに違いないと、ちーちゃんは例によってまことしやかな口調で言った。僕らは食器を片付けて、さっきまでいた寝室に戻り、交代でお風呂に入ったりしながら、あれこれ話した。僕とちーちゃんのこととか、ちーちゃんと洋介のバイト先のこととか、僕と洋介の大学生活のわずかな重複についてとか。情報の共有は夜半まで進められた。途中でアルコールも多少入った。それから―
結論を言えば、僕らは三人でひとつのベッドに入ってしまった。無論、比喩的な意味においてである。もちろん物理的にもそうだった、このベッドは僕とちーちゃんのベッドで、別の部屋に来客用を兼ねた折り畳みベッドはあるものの、喧嘩でもしない限り僕らは毎晩ここで一緒に寝ている(これは比喩的な意味でなく)。寝心地を鑑みて、それなりに広さのあるものを買った。そういうわけで三人で入ることも、多少窮屈にはなるが、十分可能である。
「どーすんだこれ」
翌朝、洋介がひとり体を起こして、ぽりぽりと頭を掻いていた。僕は横になったまま、隣の洋介と、その隣で半目のまま枕にしがみついてうとうとしているちーちゃんを眺めた。
「……洋介」
「なに」
「僕は、とても、感動しているんだけど」
「?」
「気持ちを、なにも諦めなくても、よかったんだなあと……」
洋介が、虚を突かれたような表情で僕を見た。
「洋介、うちにきてくれて、ありがとう。僕は、幸せだ」
「……」
瞬きして、洋介は顔を背け、俯いた。
「やめてよ……」
そう言って、彼は目頭に指を押し当てた。
「つまんない奴だよ、俺なんかさ、なにが人よりよくできるわけでもないし、そんなふうに、そんな顔で、ありがとうとかさ……言われること、ないもの……」
いつのまにか、布団の上に置かれた洋介の反対側の手を、半分寝たままのちーちゃんが、そろそろと撫でていた。
このようにして僕らは、三人で過ごすことを始めたのだった。
作品名:【サンプル】【創作】イメージ 作家名:中町