まほうのかがみ
美しい王女様と醜い娘
昔々、あるところ。
ちいさなちいさな、国がありました。
それはとても小さな国。地図にものらないような、ちいさな……ちいさな、うつくしい国がありました。
その国は昔から純粋な白の魔法にまもられていました。
うつくしい国の、うつくしい城の、いちばん空に近い部屋。
そこに魔法の鏡はありました。
白い魔法のかけられたその鏡には、鏡にうつる人のほんとうの"こころ"の姿を映し出すのでした。
だからこの国にうそはありません。うそは全て鏡が暴いてしまうのです。
だからこの国にうそをついた"ざいにん"はいないのです。
魔法の鏡によって、みにくい"こころ"を映し出された"ざいにん"は、国のまんなかにある広場で罪を裁かれるのです。
大きな大きな箱のようなその中に、箱から出る白い階段を"ざいにん"はあがっていきます。
外から箱の中を見ることはできません。
でも人々は知っています。
その中には夜空に浮かんでいるような、うつくしい鈍色の三日月があることを。
月は"しゃらん"という、うつくしい音とともに"ざいにん"を神さまの御許へとつれて行くのでした。