「セックスアンドザシックスティーズ」第十話
「じゃあ、奥様とやり直そうと決心されての旅行だったのですね?」
「まあ、そこまで大げさではないですがこのままではいけないのかなあとは思っていましたね」
「それなのに・・・見つけてしまった、と言うわけですね」
「そういうことです。だからといって恵子さんを誘ったんじゃないですよ。あなたの綺麗さにハッとして声を掛けてしまったんです」
「何度も言いますが・・・綺麗なんかじゃないです。恥ずかしい事言わないで下さい」
「じゃあ・・・僕の好みだったんです。細くて清潔な感じが印象的だったから・・・」
「清潔な女性が男性に声など掛けませんよ。私は・・・汚れているんです。高志さんのことひょっとしてなんて思ったぐらいですから」
「同じじゃないですか。ボクだって妻を非難しておきながら同じようなことをしている。いい加減な奴なんですよ。あなたになんか・・・相応しくない」
「高志さん、辞めましょう・・・私は今の時間を後悔はしません。明日になってあなたの気持ちが変わってもそれで構いません・・・」
「恵子さん、あなたが・・・好きだ。ボクの気持ちは変わらないよ」
「嬉しいです・・・来て良かった」
身体を寄せ合い唇を重ねた。何年振りに恵子はキスをしたのだろう・・・これからのことも、もう忘れてしまっているかのように感じられた。
作品名:「セックスアンドザシックスティーズ」第十話 作家名:てっしゅう