「哀の川」 第三十七話(最終回)
年が明けて、お正月は斉藤家に由佳も来て久しぶりに家族が揃った。
初詣を済ませて、その夜はみんなですき焼きを囲んだ。杏子から電話がかかってきて、佐伯と母と一緒にすき焼きしている、と言ってきたので、同じだと笑った。
直樹は慣れたが関西風のすき焼きの方が好きだった。甘くないとすき焼きじゃないと感じていたのだ。
由佳はセンター試験を受けてその結果で、推薦入学をすると言った。私立の女子大へ行くようだ。
純一は、多分父親の後を継ぐので、就職活動はしないつもりでいた。今年一年間イギリスへ語学留学をするつもりだとも話した。
由佳は寂しそうな顔をしたが、麻子が母親のようにしてくれているから、何とか待っていられそうに思えた。それに、夏休みには一緒に純一に会いに、ロンドンへ行こうとも約束していたから、それを楽しみにしていた。海外へは初めてでもあったからだ。
作品名:「哀の川」 第三十七話(最終回) 作家名:てっしゅう