ひと☆こと~ラヴストーリィ
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「ねえ、どこかな…」
「確か…この辺りだと思ったんだけどな…」
ふたりは、訪れた林の散歩道で何かを探していた。
「ああ、どうしよう。諦めたくないな…」
「気に入っていたの?」
「うん、だってあれは……」
風が吹いた。
頭上からお気に入りの鈴の音がした。
ふたりは、顔を見合わせ、その音の先を見上げた。
すらりとしなやかに伸びた笹竹の先で 陽射しに小さく光った。
「あれは、修学旅行でお揃いで買ったキーホルダーだもん」
「いいよ。ここに置いておこうよ。はい、そのかわり」
彼は小箱を彼女に差し出した。
「僕たちも大きくなったんだから……」
微笑み合うふたりに 鈴の音が聞こえた。
作品名:ひと☆こと~ラヴストーリィ 作家名:甜茶