「レイコの青春」 4~6
「子供は好きだわよ、私だって・・・
高校の時の第一志望は、保母さんだったもの。
でもそれだけで、あたしはまったくの無資格です。」
「小さい頃から、あれほど保母さんになると言いきって、
美千子と二人で、ずいぶんと張り切っていたのにねぇ・・・・
懐かしいわよねぇ、あの頃が。
手伝ってもらえると助かるんだなぁ。
此処はまだ無認可だから、無資格の保育ママでも通用するの。
今お願いできるとしたら、レイコしかいないんだもの。」
「無認可なんだ、ここは。
大丈夫なの、それで。
公立でも運営は、どこでも財政難で大変だというのに。」
「深夜まで預かる保育所なんて、聞いたことがないでしょ。
それでもね、夜間にどうしても働く必要のあるお母さんたちにしてみれば
ここは、心強い味方と言える施設なのよ。
どうする?手伝ってもらえると私も大助かりなんだ。
園長が退院するまででも、何とかお願い。
もうレイコしかいないんだもの、頼れる人といえば」
「・・・やるわよ、そこまで言われたら、
もう断る理由が見つからないもの。
それにどうせ、夜はいつも暇だし・・・」
「あらそうなの、助かるわぁ。良かったレイコが夜が暇で。
そう言えば、久しく見てないけど、どうしてるさ。
家出をしちゃったあんたの彼氏。」
「あいかわらずのナシのつぶて。
沖縄から、京都へ移動したようだけど、その後は、
又、手紙も電話もありません。
糸の切れた凧同然、なしのつぶてのまま。」
「ふぅ~ん。
相変わらず、放し飼いのままなんだ。
もう、2年になるはずでしょう、いいの?
それでも、レイコは・・・」
まっすぐに見つめてくる幸子の視線を、レイコはそつなく外しました。
何も答えずに、そのまま窓へ目線を流します。
「平穏な気分でいるはずがないか・・・愚問だった)
幸子が後悔をしています。
作品名:「レイコの青春」 4~6 作家名:落合順平