関西夫夫 誕生日
「まあ、俺も駅弁とかは無理になってきたわ。」
「・・・やらんでええ。あれはしんどい。」
「そうか? 深くまで届いて、ええって言うてたやろ? 」
「昔はな、落とされる心配なかったからな。」
「失礼なやっちゃ。落とすかいな。」
「いや、落とされんのもやけど、おまえの腰も心配。」
「あはははは・・・まあ二十代の筋力はない。・・・ほれ、ぐだぐだ言うてんと食え。」
「・・・もうええ・・・」
「あかんてっっ、これ、めっちゃ高いカニ入ってんねんから。」
スプーンで無理矢理に、俺の口におじやをつっこみ、俺の亭主は笑っている。俺の世話をするのが趣味になっているのだそうで、これが面倒ではなく楽しいというのだから、俺の亭主はかなりおかしい人間やとは思う。
「メシ食ったらやりたい。」
「はいはい、もう一口。ほんで、杏仁豆腐あるさかい、あれ食ったらなあ。・・・ほれ、うまいやろ? 」
「おまえに移したら俺は治る。」
「おまえのへなちょこ風邪は、なんか移らんのよ。残念ながら。・・・おつゆも飲み。・・はい、かぼちゃスープ。」
「汗掻いたら風邪は治るんや。」
「そう言わはるなあ。でも、おまえのんは悪化すんねん。せやから、あかん。」
「・・・もういらんっっ・・・」
「杏仁は? 」
「食う。」
「ほな、もう一口、こっち食ってからなあ。ああ、ええ子やわぁー水都さん。もぐもぐーって、はい。」
なんだかんだと宥めすかされて、茶碗一膳くらいのおじやを食わされた。口直しのデザートを食べてクスリ飲んで、ようやく、俺は亭主の服に目がいった。おとつい買ってきたセーターを着ていた。
「もう着てるんか? 」
「おお、これ、軽いしええわ。」
いつも俺の亭主は、白は汚れるから、と、注意するので黒のセーターを買った。ちょっと模様ぐらいはあるほうがええか、と、水色で幾何学模様が入っているのだが、なかなか似合っている。
・・・・風邪ひいた甲斐あったわ・・・・・
次からの贈り物ができるイベントには、なるべく、こういうことを考えようと思いつつ、俺はゆっくりと目を閉じる。寝て起きたら、襲ったろ、と、考えていたので笑っていた。