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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十三回】ふわふわり

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「くんな!!」
京助が怒鳴る
「って言ってとまったら明日から5時に起きてやらぁ…;」
一歩一歩近づいてくる女性を見て悠助を抱く腕に力がはいって壁に着けた背中には熱くもないのに汗をかいていた
「っ…何だよ! 何…っまたアレか! 時がってのかよ!!」
京助が女性にむかって怒鳴っても弧を描いた赤い唇はそのままただゆっくりと二人にむかって進んでくる

『やばい…』

どくん、と心臓が跳ねたかと思うと背中が痛いくらい熱くなった
と同時に下から巻き起こった強風
「っだぁあっ!!;」
悠助を抱き締めて京助が強風に耐える
背中には竜の羽があらわれていた

「そんなに怖い顔を揃えなくとも今回はまだあいつらに手はだしはしないよ」
慧喜の姿の指徳が言った
「今私が…上が欲しているのは…竜の力さ」
「竜…の?」
慧光が構え姿勢をやめた
「どういうことやんきに…竜の力って…」
慧喜の姿の指徳が向けた視線の先には制多迦
制多迦に一斉に視線が向けられると制多迦が締まりなくヘラリと笑った
「まさか…」
矜羯羅がハッとして慧喜を見ると慧喜の傍に立っていたオレンジの髪の女性
「指徳!!」
赤い唇がニッと弧を描くと途端慧喜の体が崩れた
「慧喜!!」
慧光が駆け寄ろうとするのを矜羯羅が止める
「慧喜!! 慧喜っ!!」
「落ち着きなよ慧光」
矜羯羅の手が慧光の頭におかれた
「…阿修羅?」
烏倶婆迦が前に立っている阿修羅の異変に阿修羅の服をくいっとひっぱった
「阿修羅…阿修羅ってば」
阿修羅の体を揺する烏倶婆迦の声はおそらく阿修羅には聞こえていないのだろう阿修羅は目を指徳に向けたままぴくりとも動かない
「竜が封じた制多迦を解放するには竜の力が必要なんだよ」
そういった指徳の手には赤く光る宝珠
制多迦の頭についているその宝珠の中には竜によって封じ込められた【制多迦】がいる
宝珠を見た制多迦の顔が歪んだ
「その前に」
緊那羅の声が部屋に響いた
「京助と悠助を返してもらうっちゃ」
摩呵不思議服になった緊那羅が立ち上がり指徳を見てきっぱりと言った
緊那羅の言葉に指徳の口の端がニッとあがった
「返すも返さないも…ねぇ? 言っただろう? 私が欲しいのは…竜の、力なんだよ」
指徳の持つ制多迦の赤い宝珠が鈍く光る
「まだ足りない…か…しかしあれ以上奪っていれば…」
「ラムちゃん!!」
南の声に緊那羅が振り向くと目に入ったもの
「き…」
三馬鹿に囲まれ揺すられている京助
その腕の中には悠助がいた
「京助!!」
中島を押し退けて京助の頬をぺちぺち叩きながら緊那羅が名前を呼ぶ
すーすーと寝息をたてる悠助に対してぐったりとしてぴくりとも動かない京助の鼻に坂田が手をかざした
「生きて…はいる」
坂田の言葉に張り詰めていた空気が一皮だけむけた気がした
「おいちゃんの計算によると指徳は京助の中の竜の力をとったんだ」
烏倶婆迦が言う
「竜の力…って力ってたしか…いの…ち…」
前に聞いた話を思い出した南が言うと中島と坂田が京助を見た
「じょ…うだん…」
「じゃあ何か!? あいつ…あいつ京助の命とったってのか!? じゃあ京助…は…」
「最小限の力は残した」
騒ぐ三馬鹿に指徳が言う
「あとは…そいつ次第だねぇ…死ぬも生きるも」
指徳が宝珠を撫で笑う
「…とく…」
制多迦が指徳に棒を向けて構えた
「…ょうすけの力返してくれる?」
いつも下がっている眉を上げ制多迦が指徳に言う
「無駄だよ制多迦…」
制多迦の隣に矜羯羅が立った
矜羯羅の周りには小さい玉がいくつも浮いている
「渡す気はない…だったら奪うしかないだろ」
「おやおや…怖いねぇ…」
くすくす笑う指徳が足元に倒れていた慧喜の体を抱き上げた
「慧喜!!」
慧光が駆け出す
「慧光!!」
小さな黒い玉が慧光と慧喜の間に現われた
矜羯羅が慧光の腕をひっぱったのとほぼ時同じくして目を開けてはいられないほどの光と押しつぶされそうなほどの重力が襲う
「っ…」
瞬時に矜羯羅が宙に光で印を描くと重力が和らいだ
光が引くと指徳と慧喜そして黒い玉の姿はどこにもなく
「え…き…」
キィキィと室内灯がゆれて上に蓄まっていた埃が落ちてきた
何事もなかったかのように聞こえた風鈴の音は4回

青かった空がいつのまにか灰色にかわっていた