moonlight(前編)
「……楽しみですね」
みちる、健斗、巧が、それぞれの反応を示す。
「もちろん、ここにいる四人で活動ね。ちなみにバンド名は……わたしが考えたわ!」
「ええっ!? バンド名、もう決まってんスか!?」
健斗が落胆を混ぜた驚きをあげる。
「何よ、文句があるの? わたしが部長なんだから、決めるのはもちろん、わ・た・し! でしょ! どうせあんたが決めてもナルシな言葉しかつかないしねぇ、ナル男」
「な、ナル男じゃねぇっスよ!」
健斗は思わず立ち上がる。それを彼女は「はん!」と鼻であしらい、
「何よ、面接で、『俺がいないと、星たちが輝くことができないぜ』とわけのわからんイタイことを言ったのは、どこのだれよ?」
ネオのイヤミな言い回しに、カチンときた健斗は彼女に接近し、顔を近づけ、
「あ、あれのどこがイタイっスか! 俺がいないと先輩や生徒が輝くことがないぜと言っただけですよ!」
ネオもそれ対抗するかのように、バン! とその場で大きな足音を立て、
「そうよ! だからナルシスト男――ナル男って呼んでるんじゃない。自覚しなさいよ!」
「認めんっス! 先輩であろうがなんだろうが、俺はナルシストじゃあないっス!」
「認めなさいよ!」
「絶対に違うっス!」
「認めろってば!」
「ああーっ、もう! うるさ――――――いっ!!」
ゴチ――――――ン!!
みちる様の天罰が二人の脳天に突き刺さった。
「ったく、バカなことをする暇があんなら余所でやれよ!」
「ごめんなさい……」
「すんませんっス……」
鬼の鉄鎚に二人の熱は一気に冷めた。
「……で、バンドやるのはいいけど、どういう編成でやるのよ。あたしはギターしかできないよ」
通常モードに戻ったみちるがネオに訊ねる。こういう切り替えはうまいなあ、とネオは思いながら、
「うん。一年生二人は面接での希望通り、健斗はドラム、タッくんはベース。みっちぃはもちろんギター兼バックコーラス。そして私がボーカルということで。もちろん、異論は認めないわよ、健斗」
作品名:moonlight(前編) 作家名:永山あゆむ