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「あ、あれ?え……えっと……や、やっぱ俺……厚かましかった……の、か……?それともやり方間違えて……?」
「………………今のは……何……?」
「え?その……新井くんと鈴本くんに、親しい友達なら挨拶でキスするって……特に親しいと口にするって聞いたから……」
その瞬間、廉冶には後ろの方ででかすかにカタ、と音が鳴ったのが聞こえた。口元がピクリ、とする。
「あ……と、俺やっぱそこまで親しくはなかった……?それともやり方違った……?」
また困ったような表情をしている三弥に、廉冶はニッコリと笑い返す。
「いや?お前と俺は超親しい間柄で間違ってないよ?むしろお前の一番親しい相手だと思ってていいよ?びっくりしたのは、アレだ、不意をつかれた。あと、基本人前でするものじゃないからね?今後も人前じゃなく、二人きりの時にすればいいと思うよ?それと、これは一番の親友にするものだから、お前は俺以外にはするな」
「え、そうなのか?あの、親友って、思ってて、いいの、か……?」
色々言った内容で気になったのはそこか!
笑っていいやら呆れていいやら……。とりあえず廉冶はニッコリしたまま三弥の髪をクシャ、とする。
「ん。だから、俺だけ、な。じゃあちょっと待ってろ」
「?ああ、分かった」
三弥が首をかしげている中、廉冶はニッコリと笑顔のまま、屋上の出入り口に近づいて行った。そうしてドアを乱暴に開けたかと思うと中に入り、バタン!と閉める。
ふと、叫び声が聞こえたような……?
三弥が怪訝に思っていると、廉冶がまた笑顔のまま戻ってきた。
何気に冷静になり、「俺、何言ってんだ……?」などと思いながら。
一方。
「お母さーん!お父さんに怒られた!」
「……だからその呼び名やめろよ……。つかお父さんて……まさかレンジか?やめてくれ、仮であってもあんなドSな俺様とセット扱いはごめんこうむる。……で?」
「で?」
「何やらかしたんだ、お前ら?」
「「俺らが何かやったと決めつけだ!」」
「間違ってるのか?」
「「合ってまーす!」」
呆れたような陸斗に、有紀と亜希は三弥とのやりとりを説明した上で、こっそりドアの隙間から様子を覗いていたのを廉冶に見つかってボコられた、と言った。
「あほか。お前らが悪いだろうが。まったく何とんでもない嘘教えてんだ。しかも覗きか。ボコられて当然だな」
「「お母さんが冷たい!」」
「……。にしても保志乃くんって、とことん天然なんだな……。で、キスされた後、レンジ何て?」
「いやー……固まった後でなんか言ってたんだけど、さすがに聞こえなかった。で、ミヤちゃんの頭わしわしってしたかと思うと、もう俺らボコりにきたからねー……」
「……ふーん、そっか」