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「レイコの青春」 1~3

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 北上してきた本町通りは、
そのまま、桐生天満宮の表参道へと続きます。
直進してきた道路は、ここで初めて天満宮の鳥居前から、
大きく右へ迂回をします。
群馬大学の敷地脇を抜けてから、バスの車庫が有る天神町を経由して、
その先をさらに進んで、山狭地の梅田地区をめざします。
織物の町・桐生は、この天満宮が市街地作りの起点とされています。


 石畳の参道をそのまま本殿に向かって進むと、山門の手前に、
小さな石の橋が架かっています。
そのたもとには、涸れたままの用水路が昔のままに残っています。
高さ1,5mほどの木造の古い水車は、織都の面影を伝えるために、
いまでも石積みの岸に大切に保存をされています。
明治から大正にかけて織物工場が林立した、この界隈では、
水車がその大きな原動力になりました。


 ここの境内は、幼い頃からレイコが、とりわけ好んであそびました。
拝殿から裏手へまわり、神楽殿を過ぎたあたりから、
壁一面を埋め尽くして現れる、天満宮の彫刻群も大のお気に入りです。
いずれも江戸時代に彫られたもので、多くの職人たちによって刻まれました。
西から北の壁面へかけて、さらに東の壁のすべてを覆い尽くした
この彫刻群は、古くから桐生が、織物の里として
繁栄してきたことの証です。


 その大好きな遊び場を、今でもレイコは毎日通りぬけています。
短大を卒業してから、地元の自動車販売店に就職したレイコは、
バス停への「抜け道」として毎朝ここを、
いつものように走り抜けていきます。