「セックスアンドザシックスティーズ」 第九話
典子の後押しに乗せられるように恵子は男性が席を立った瞬間を意識するように見つめていた。
なにやら押し問答をしながら先に隣にいた男性が席を立って出て行ってしまった。結果的に意中の男性が一人残ってまだ飲み続けていた。
「なにか言い争ったのかしら・・・残されたような感じね。傍に行っちゃいなさいよ・・・ひょっとしてとてもいいタイミングなのかも知れないから」
そう典子に言われて、ゆっくりと席を立って男性のそばに恵子は近寄って行った。
「こんばんわ・・・先ほどからこちらに居られると気にしておりました。お一人でしたらお隣に座っても宜しいですか?」
酔いも手伝って大胆になっていた恵子だった。
「ええ、先ほどは失礼なことをしました。でも嬉しいです。どうぞ座ってください。お連れさんは宜しかったのですか?」
「なにやら先に帰ると言いますので我儘を言わせて頂きました」
「わがままだなんて・・・光栄です。申し遅れました・・・犬飼といいます名前は高志です。静岡から来ました」
「私こそ・・・恵子といいます。苗字は中井です。大阪から着ました」
作品名:「セックスアンドザシックスティーズ」 第九話 作家名:てっしゅう