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てっしゅう
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「哀の川」 第三十六話

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12月に入って、休みに入った純一は東京に戻ろうかどうか迷っていた。ばあちゃんを一人残して帰りづらい気持ちに感じていたからである。杏子から電話があって、純一はそれなら、こちらへ帰ってきてから、自分が東京に戻ると返事した。由佳ともじいちゃんの事があったから電話はしていたが、しばらく逢っていなかった。

杏子はお店のみんなに盛大に送別会をやってもらい、淋しさを感じながらも、お別れしてこれまでのご贔屓に感謝した。荷物は宅急便で配送し、自分は身軽な出で立ちで神戸に向かった。28日の夜、直樹に別れの挨拶をしてみんなで食事をした。あの渋谷のカフェだ。麻子が予約していて、店長は特別に部屋と料理を用意してくれていた。

「今まで長い間、お世話になりました。本当にありがとうございました」
杏子は頭を深く下げて、礼を言った。
一人一人挨拶をした。

「杏子さん、元気で幸せになって下さいね。応援していますから」麻子が言った。
「落ち着いたら遊びに主人と娘と行きますから、お元気で幸せにね」裕子が言った。
「ご主人のこと大切にしてあげて下さい。お幸せに・・・」美津夫が言った。
最後に直樹が、「姉さん、お別れだね・・・母さんを頼むよ。時々遊びに行くから、佐伯さんと幸せにね。ボクは・・・ずっと・・・姉さんの弟だよ」

この最後の言葉に、杏子は感激した。いや、直樹の自分への気持ちをすべて知った。
みんなの想いを胸に杏子は最後の挨拶をした。

「私は幸せでした。辛かったこともありましたが、皆さんに祝福されてお別れが出来ること、本当に感謝しています。さようなら・・・ありがとう」