ゴルフは喜劇か悲劇、それともミステリー?
(12) 黒コブラ
マレーシアのジャングルの中にあるゴルフ場。
まさに自然の中にあり、猿やトカゲやいろいろな野生の動物がプレー中に現れ出てくる。
だが、これには驚いた。
暑い昼下がり、バケツをひっくり返したようなスコールがきた。
その間、ビールを飲んで一休み。
そして、ラウンドの再開。
その最初のミドルホール。
そこは砲台グリーン。
4人全員が見事に打ち上げ、グリーンに上がって行くと、ピンに太くて黒いロープのようなものが巻き付いている。
よくよく見てみると、それは黒コブラなのだ。
ピンにとぐろを巻いて絡まっている。
そして、こちらを睨み付けた目が鋭い。
コブラに近付けば、ピッピッと毒を吹き掛けてくる。
それが目に入れば、失明する。
また噛まれれば命を落とす危険がある。
ボールはすでにグリーン上。
しかし、グリーンには恐くって上がって行けない。
危な過ぎるのだ。
ゴルフの基本ルールは、「スルー・ザ・グリーン」。
ティ・グラウンドから打ち出したボールはあるがままの状態で打ち進み、グリーンでカップ・インをして、そのホールは完結する。
しかし、この事態。
黒コブラのせいで、完結できないのだ。
ここで4人で協議。
2パターで完結したことにする・・・
で、一旦決まり掛けたが、そこはちょっとズッコイ面々。
全員の幸せのために、1パターで完結したことにする。
これで、全員異議な~し。
そして、各自のボールを黒コブラの面前に捨て置き、何もなかったように次のホールへと前進した。
こうして、まさに黒コブラのお陰で、確実に1、2打は得したのだ。
ゴルフ教訓
「スルー・ザ・グリーン、それは時として・・・命懸け」
つづく
作品名:ゴルフは喜劇か悲劇、それともミステリー? 作家名:鮎風 遊