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遊学日記

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今まで全然ピンとこなかった言葉をあの時始めてリアルに感じた。頭の中はクエスチョンマークだらけで、何でこんな暮らしをしている人がいるのか、一体何がこの村の問題なのか、はっきり誰かに教えて欲しかった。マンに聞けば納得のいく答えが返ってきたのだろうけれど、そんな事を話せる英語力は私にはなく、結局は何も分からずじまいで、それがとても悔しくてたまらなかった。翌日も出発時間ぎりぎりまで、男の子をずっと抱っこして過ごし、後ろ髪惹かれる思いで村を後にした。
山を下りきりトレッキングが終わった時には、カジャとハグして大喜びし、ゲストハウスの綺麗なシャワーを浴びた。水シャワーだったけれど、天然の川シャワーに比べたら、それは比べ物にならないくらいの幸せの産物だった。ところが、後に他のメンバーと集合すると、ホットシャワーが最高だと言っている。私達はなんで水シャワーだったのかと不思議に思い、部屋に戻り確認してみると、ホットシャワーのボイラーが入っていなかった事に気づき二人で大笑いをした。そうしてツアーの最終日を向かえ、最初のホテルに戻ってきた時には、そのホテルがこの国での中級クラスだと納得できる感覚へ変わっていた。
初めて多国籍の中で旅する自分、見るものが全て目新しいのに加え、言葉もろくに話せなかったけれど、その中で築けた友情。想像していた以上に充実した旅になり、自分の中の新しい扉が開けたような気がした。言葉の必要のなさと、言葉の必要性を知った旅にもなった。言葉なんてなくても人間同士、心の通い合いもできるし友達になれる。だけど言葉なしでは伝えられない事や理解できない事も沢山あった。帰国後は、あの悔しさを忘れないと心に誓い、空いた時間は英語の勉強に充てた。
そしてもう一つ、山岳民族の村で感じた思いと、あの小さな男の子の存在だけは日本へ戻ってからもずっと忘れられず、自分の中で不完全燃焼になっている感じがした。あの時、言葉で聞き、納得する事ができなかった事が原因なのかも知れない。タイの山岳民族が抱える問題や、世界の貧困問題について自分なりに調べてみたり、募金をしてみたりした。
私は元々子供が好きだったわけではなかった。子供好きの友人が、町で見る子供や赤ちゃんを見て「可愛いね~。」と言っているのを聞きながら、何がどう可愛いのかさっぱり分からないと思っていたほどだった。おそらく私にずっと懐いてきてくれたあの男の子の存在が、自分の中の何かを動かしたのかも知れない。
子供達のキラキラ輝いている瞳。私に何か出来る事はないのかな、何か出来る事があるならしてあげたい。具体的には何も分からないけれど、私はあんな子供達に何かをしてあげられる存在になりたい。そんな気持ちが芽生えていた。

だから今回の旅は、前回の旅の続きとして、同じ場所から始めたかった。
作品名:遊学日記 作家名:ともえ