ちーくんと幼馴染
準備期間(受難の始まりとも言う)
「信じてた」
愛らしい顔を涙で濡らして幼馴染は言った。
「何を?」
俺は聞いた。
「世界は優しいって信じてた」
「信じてた」
「信じてたのに」
「裏切られたの」
そう言って、またぽろぽと涙を流し始めた。
「バカだな。いまさら気づいたのか」
俺は失笑を禁じえなかった。
それは当たり前のことだったから。
そんな事実にいまさら気づいたのかと、笑った。
そんな空気を悟ったのか、幼馴染は来ていたお気に入りの花柄のワンピースをぎゅっと、握った。
そして、また泣いた。
そんな幼馴染が泣く姿は苦手だ。弱弱しく、可憐過ぎる。
だけど、もはやこれは決定事項。
決まってしまった…否、当たり前のように”決められていた”ことだった。
それこそ俺達が生まれた瞬間から。
避けようの無い現実にして事実。
だから……。
「いつまでもメソメソしてねーでとっとと"学ラン"着て学校来いやぁぁ!!!!!」
「ヤダー!!"私"はセーラーだもんっ!学ランじゃないもん!ちーくんのバカ!」
「どあほぅ!どこの世界に男がセーラー服着て中学通うんだ!三次元なめてんじゃねぇぞッ」
「え?問題無いよ?私は女の子だもん。セーラーであってるんだもん。学校やママたちが間違ってるんだよ」
そう。花柄のワンピースを着たこの至極可憐な美少女と見間違う俺と"同性の"(ここ強調)幼馴染はそう言い切った。
「いい加減に現実見ねーかッ!この女男がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
誰かこのポジションを変わってくれ。