漢字一文字の旅 二巻 第一章より
六の六 【跳】
【跳】、右の「兆」は亀の甲が熱ではじけ、出来たひび割れの形だそうな。
他にいどむことを「挑」、そして激しく躍り上がるようにとぶことが【跳】だとか。
佛跳牆(ぶっちょうしょう、フォーティャオチァン)
これは中国の伝統ある福建料理。
高級な乾物食材、干しアワビに干し貝柱、フカヒレに朝鮮人参、そして紹興酒など二十種類以上を数日かけて調理した高級スープだ。
そして、その味は……
あまりにも美味しそうな香りがして、お坊さんでさえも寺の垣根を飛び越えてやって来るほどのものだ……と。
だから名前は佛跳牆(ぶっちょうしょう)。
つまり「仏が跳ぶ、牆(垣根)を」と言う。
通称……『ブットビ・スープ』と呼ばれている。
確かに味わってみると、お坊さんの気持ちがわかるほどの美味。身体はポカポカと熱くなり、跳ねたいほど元気になる。
まさに……疑いなしの『ブットビ』味だ。
他に、余談となるが、
【跳】という漢字、四字熟語「竜跳虎臥(りゅうちょうこが)というのがある。
意味は、筆勢、いわゆる文章が縦横自在であり、竜が跳ねるような勢いがあることをいう。
物書きの端くれとして、『ブットビ・スープ』を飲んで、あやかりたいものだ。
とにかく【跳】、元気一杯な『ブットビ』漢字と言える。
作品名:漢字一文字の旅 二巻 第一章より 作家名:鮎風 遊