神ノ王冠を戴きし者
『第三話 アスナの激怒』
レオン達は魔神機の錬成を済まし、教室へと戻って来ていた。
「皆さん、魔神機錬成お疲れ様でした。午後は昼食を済まし闘技場に集合、模擬戦をします。また、授業終了後はその場で解散となります。それでは解散! 」
シオンが連絡を言い終わるとぞろぞろと移動を開始し始めた。
「レオン、アスナ。飯食いに行こうぜ! 」
「おう、アスナも行こうぜ。」
「うん! 」
レオン達は昼食を食べに食堂へ行こうとした。しかし、入口の前で数人の男子が立ちはだかる。
「なぁ、アスナさん。そんな劣等生……はほっといて俺らと食べない? 」
その言葉にケビンが過剰に反応した。
「あぁ!何だとテメェ!! 」
ケビンと男子達が争う中、レオンは恐る恐るアスナの方を向いた。アスナの顔は彼女の艶やかな栗色の髪で見えなかったが、彼女の周りが激しく点滅し始めた。ケビンらも気づいたのか驚愕の顔でこちらを向いた。しかしレオンは焦ってその事には気付かなかった。
「(ま、まずい! )」
アスナはある事情でレオンと魔力的回路で繋がっており、彼の力を彼女の努力の賜物である精神力で抑えている。そうなると彼女の魔力を抑えている力は多少緩くなる。いつもは別に異常はないが彼女の感情が激しくなると彼女の魔力が暴走してしまうのだ。レオンは素早くケビンらに見られないようにアスナの前に立つと彼女の肩を軽く持つ。すると彼女は顔を上げた。そこには激怒により涙を流す彼女の顔があった。レオンは小声で小さく呟く。
「アスナ、落ち着くんだ。俺は大丈夫だから。」
「でも…でも……! 」
「落ち着いて、アスナ……」
やがてアスナは落ち着いたのか、周りの魔力が拡散する。レオンは薄く魔力を辺りに撒き、アスナの魔力を彼女の身体へと戻す。
「……レオン。」
アスナがポツリと呟いた。そこで彼は決めた。どうやらあの男子生徒には少し罰を与えなければならない。レオンはアスナに微笑むと、ケビンの横を通り男子生徒の前に。
「な、なんだよ! 」
「アスナを泣かした罰だ、俺と闘え。」
「……! 」
男子生徒が狼狽えるのを無視してレオンは冷たく笑った。それを見た男子生徒は冷や汗をかきながら頷いた。
◆◆◆
場所は変わって食堂。レオン達はそれぞれ昼食を食べていた。ケビンはラーメンを食べながらレオンを心配そうに見た。
「大丈夫なのかレオン? 」
「? 何が? 」
「模擬戦だよ! あいつ一つ上の先輩で結構有名なアスラ・グランフィード先輩の弟でアシス・グランフィードでしかも貴族でも有名なグランフィード家の次男坊だぞ?! 」
「へぇー、そうなんだぁ! 」
「知らなかったのかよ! 」
レオンはサンドイッチを食べながらアスナを見た。アスナはショボンとしながらトーストを食べていた。レオンはそんなアスナを見て、彼女の頭をクシャリと撫でた。
「そんな落ち込むなって。」
「でも、私のせいで……」
「あれは俺が決めた事だったからアスナのせいじゃないよ。それにアスナは俺がどんだけ強いか一番理解してるだろ? 」
「うん……! 負けないでね。」
「勿論だ! 」
そんな光景を胸を押さえながら、慎ましく見ていたケビンはふと思い出したのか、レオンとアスナに向けて話し出した。
「なぁ、二人っていつから一緒にいるんだ? 」
「ん? 結構前から。」
「明確に言うと3歳頃から……かな? 」
「そりゃすげぇな……。」
「私とレオンは赤い糸で繋がっているんだよ!! 」
突然アスナはレオンに抱き着く。レオンも驚きながらもしっかりと支える。それを見てケビンはテーブルに突っ伏した。
「もう、いいよ……。」
ケビンの声は虚しく辺りに響いた。