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神ノ王冠を戴きし者

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『第二話 魔神機』



「…着席! 」
 ガタガタ! という音と共に生徒達が椅子に座る。教卓の前には橙色に近い色の髪をポニーテールにし、深紅の眼を持った女性……シオン・シュリシアが立っている。
「はい!皆さん。今日は午前中に魔神機の制作、午後は模擬戦をします。それじゃあ、校庭に移動して下さい!!」
 シオンの言葉と共に生徒達は散り散りと校庭へと向かう。レオン達はある程度生徒が向かった後にゆっくりと向かっていた。
「…グスン。」
「よしよし…」
「おい、ケビン。いい加減機嫌直せよ~。」
「む~…。」
「ほら、いつか俺とアスナで模擬戦してやるから! 」
「ほ…本当!? 」
「本当、本当。な、アスナ? 」
「う、うん! 」
「よっしゃゃゃゃやあ!! 」
 何故ケビンがそんなに喜んでいるのか? それはケビンが超が付くほどの戦闘マニアだからだ。

◆◆◆

 ──そんな事があり、三人は『魔神機』の制作の為に校庭へと来ていた。他の皆はそれぞれチームを組み、先生から魔晶石を受け取る所だ。『魔晶石』とは通常の結晶が超強力の魔力空間に年単位で置かれ結晶が魔力を吸収した事で生まれる。魔獣や禍人、禍神に対抗できる『魔神機』を造るのに使用する。
「それじゃあ、私達も貰おうか。」
 アスナが上機嫌にレオンの手を取り、シオンの所へと引っ張る。
「お、おい! アスナってば!! 」
 レオンは顔を真っ赤にしながら付いていった。
「…どうしてこんなにピッタリなカップルなんだ? 」
 ケビンは然り気無い疑問を浮かべながら付いていく。
「シオン先生~! 魔晶石3つくださ~い。」
「はい、どうぞ。……って、どうしてそんなにもラブラブな訳? 」
 シオンが箱から虹色に光輝く石を手渡しながらアスナに質問をした。
「愛し合う事が出来るからです! 」
 アスナはにこやかに、そして嬉しそうに言う。レオンは後ろでますます顔を赤くした。
「あ~もういいわ、お腹一杯よ…。」
 シオンがそう言いながらお腹を抱えている。
「ですよねぇ。」
二人に追いついたケビンが苦笑いを浮かべながらシオンに話しかける。
「…さぁ、『錬成』を始めましょうか。」
 シオンが少し辛そうにお腹を擦りながらある準備に入る。ある準備とは『錬成』と言う名をしている。これは『魔晶石』を所持者の魔力に応じて『魔神機』へと構築する技術だ。魔法陣が完成するとまずケビンが魔法陣の上に立つ。
「よし! 行くぜ!! 『世界の楔となりし神々よ!今その力の一片を我に与えたまえ。神は炎を司り、神は破戒を司る。我が御霊に応え、此所に今姿顕せ!』」
 ケビンの詠唱と共に魔法陣から膨大な光が漏れだし、魔晶石の姿を変えていく。その形は片手剣より二周りは大きいだろう剣に赤銅色と金色が基調となった、そして柄には真紅の魔晶石が輝いている片手剣だった。
「よしゃ! 成功だぜ! 」
「へぇ~、魔晶石自体が装飾で付いているなんて珍しいね。」
「そうだな。と、ケビン名前は何なんだ? 」
 この『魔神機』は名前が既に付いており、錬成成功と共に頭の中に浮かんでくるのだ。
「ん…? 《アスカロン》だそうだ。」
 ケビンはレオンにそう答えると片手で軽々と持ち上げ、何度か軽く素振りをする。
 そしてアスナの番。だがアスナとレオンは小声で話しあっていた。
「レオン……。」
「いいかい、アスナ。もし俺達の魔力に『アレ』が反応したら問答無用で……殺すんだ。」
「だけど……。」
「アスナ。『アレ』は殺さずに退治する事は出来ない。」
「……わかった。」
 アスナは話し終わると魔法陣へと向かい、詠唱を開始する。
「『神創世界を護りし楔よ。今、我が御霊に応え、彼の姿を我御前に顕れたまえ。楔は光を司り、楔は創造を司る。我は創世の姫御子なり!煌めけ、創世の御霊よ!今此所に楔となりし神を顕現したまえ!!』」
 詠唱を終えると魔晶石が形を変えると共に膨大な魔力が練られていく。そして魔晶石に吸収されなかった余りの魔力が魔法陣から漏れだし空中に光輝く球状が表れる。それを見たシオンとケビンが驚愕の声を上げる。
「な、何だよあの魔力量!?」
「どんな生活をしたらあんなに巨大な魔力量になるの?!」
 魔力量は過去や普段の生活をへて巨大に成長する。そしてアスナは『あの夜』を見て、体感して、そして『アレ』を倒し続ける彼女のはあまりにも巨大な力を持つ。そしてその力の数々は魔晶石へと注がれ形を変形していく。その形はただ全てを切り伏せ、刺し尽くさんとする刃。だがその刀身は水晶のように透き通り全てを魅了する……そんな細剣をアスナは握っていた。
「綺麗…。」
 見とれていた誰かがそう呟いた。レオンは目を細めていた。その目には懐かしさと後悔と優しさと恐怖……そしてその奥底に湛えた怒りと不安とが入り交じった闇……。ケビンはアスナを見るレオンの目にそんな感情があるのを見た。アスナはその手に握る細剣を鞘に納めながら二人の元へと戻ってきた。その目にはその頬には一筋の涙が流れている。その神々しい姿にこの場にいる全ての他人が溜め息混じりの感嘆を洩らした。そんな中レオンが静かに、だが優しい声で彼女の名を呼ぶ。
「……アスナ。」
 そして彼女はただ泣きながら彼に答える。
「レオン、この剣……。」
「あぁ、間違いなくシーナさんの細剣だ。」
 レオンがそう言うとアスナはその細剣を優しくその身で包み込む。
「……これはきっと運命なんだね。母さん、私に力を貸してください。」
 アスナはレオンに身を任せ、ただただ涙を流す。それをレオンは静かにだがしっかりとその身で包み、支える。それを見た女子は微かな感嘆と羨ましさの吐息を吐く。その感嘆は二人のその空間に、レオンの対応に。そして羨ましさはレオンのように支える恋人を求め、アスナに嫉妬ではなく羨ましさを抱く。だが、男子は嫉妬と憎悪に包まれていた。誰もが求める彼女……アスナを包み込むあの憎たらしい劣等生を、ただただ憎み、嫉妬する。そんな空間を破るのも二人だった。
「さぁ、アスナ。立てるかい? 」
「うん、大丈夫だよ。それよりレオンの魔神機を造らなきゃ。」
「ああ、そうだね。」
 レオンはアスナを手で支えながら立たせ、自身は魔晶石を手に魔法陣へと向かう。その空間が砕かれても女子はレオンに好奇心を生みだしていた。しかし男子は失敗をただただ願い目を凝らしていた。レオンは魔晶石を置くと不思議な詠唱を開始する。
「『さぁ、運命は狂い始めた。御霊は我を司る。御霊は死を司る。御霊は闇を司る。我は復讐せし者なり。死を求める血に飢えし神冠よ、今その深き闇を放て。我の名に答えよ!我の名は『レオン・***・******』なり!』」
 レオンが詠唱を終えると魔法陣からは赤黒い血のような光が発される。そして魔晶石は漆黒に染まると形を変形する。その形は漆黒の革に包まれた本だった。そしてその本の中心には血が渦巻くような赤黒い魔晶石が飾られている。そして戻ってきたレオンにアスナが突然抱き着く。
「レオン! それって……」
「ああ、父上が使っていた魔神機……『黒帝ノ神威《デュラダル》』だ。」
作品名:神ノ王冠を戴きし者 作家名:星來