ウロボロスの脳内麻薬 第四章 『虹蛇(ナギ)ノ杜(もり)』
七(なな)、八(や)、九(ここの)、十(たり)となりけりや……布(ふ)留(る)部(べ)
『〝布(ふ)瑠(る)の言(こと)〟! 亜鳥、キミはまさかこの子を──!』
布(ふ)留(る)部(べ)、由良由良止(ゆらゆらと)、布(ふ)留(る)部(べ)
『黄泉(よみ)帰(かえ)らせるつもりか!!』
沖(おき)津(つ)鏡(かがみ)、辺(へ)津(つ)鏡(かがみ)、八(や)握(つかの)剣(つるぎ)、生(いく)玉(たま)、死返(まかるへしの)玉(たま)、足(たる)玉(たま)、道(ちか)返(へしの)玉(たま)、蛇(おろちの)比(ひ)礼(れ)、蜂(はちの)比(ひ)礼(れ)、品(くさぐさの)物(もの)之(の)比(ひ)礼(れ)
亜鳥はハッカを膝にのせ抱え込んだ。そしてハッカの胸の上に布の被った鳥籠をのせる。
『あ~あ、〝神(かん)孕(はら)み〟を使っちゃうつもりだよもったいないね~。こりゃ確かに生き返るわ。でも、そこから生まれるのは人間じゃない。〝蛭子命(ヒルコ)〟だ。神によって創られたにもかかわらず神にも、けれど人間にもなれない不遇の孤(みなし)児(ご)だよ』
ハッカの胸に置いた鳥籠の鍵穴。そこへ亜鳥はハッカの首にかかっている螺子巻きを差し込んだ。すると鳥籠を覆っていた布が弾け、中からまばゆい光があふれ出てくる。
光は多角形的な方陣を何重にも形成し、ハッカと亜鳥を囲(い)繞(によう)した。
やがて方陣は乱麻状にもつれ楕円の玉緒を生成する。
『世界卵(デミアン)──忌むべき哉(かな)、忌むべき哉、ここに永遠の処女が誕生してしまった』
作品名:ウロボロスの脳内麻薬 第四章 『虹蛇(ナギ)ノ杜(もり)』 作家名:山本ペチカ