小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アイラブ桐生 第4部 最終回

INDEX|6ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 


 同窓会の案内状で、落ちたのは返信用の葉書です。
15の春から早いもので、もう、10年が経ちました・・・
という書き出しでその案内状は書き始めています。
来年の年明けに、初めての同窓会をひらくという内容でした。



 返信ハガキの着信相手が、レイコの名前になっています。
何げなく、ハガキの裏を返してみて、自分の目を疑いました。
出席の部分はすでに横線で消されていて
、欠席の部分に大きく○がつけられていました。
下のほうにあるコメント欄にも、すでに書き込みがあります。
レイコが、自分で書きこんだもののようです。


 「旅先のことゆえ、出席は無理だと思い、
 私が勝手に欠席と判断をいたしました。
 15の春に泣いてから、早いもので
 すでに10年が経過をしました。・・・・」


 そこまでは普通の
文字の大きさで、容易に読むことが出来ました。
しかしその先が、どう見つめても読めません。
余りにも小さな文字列のために、読み取ることができません。
米粒みたいに小さな文字ばかりが、ハガキにびっしりと並んでいます。
レイコに、こんな特技があったのかと驚くほどに、
それはきわめて小さな文字の列でした。
部屋の隅に有るスタンドを点灯して目を寄せると、
やれがやっと見えるようになりました。



 みんなは、ああいう男だから安心をして、
いつまでも待てと言いますが、ここまで堪えてきたものの、
もう耐える勇気が私の中で、何とも言えない寂しさに負けて、
その灯が、消えてしまいそうになってきました。

 あなたが育つための旅ならば、
それを支えるのが私の務めだと心に決めて、今日までは、
耐えて頑張り抜いたつもりです。

でも、あなたと私の同級生たちが、
あなたを呼び戻すきっかけを、私に作ってくれました。
私は、同級生たちのこの好意に、喜んで甘えたいと考えました。
私の胸が、辛さと、哀しみで一杯になる前に、
どうぞ一度だけ、私の胸に戻ってください。

哀しみではち切れそうなわたしの胸が、いちどだけ満たされれば、
わたしはいつでも、再びあなたを気が済むまでの
旅に出したいと決めています。
どうぞ、一度だけ、25歳になったレイコを慰めるために、
桐生へ戻ってください。

もう、レイコの本音は、
貴方と毎日暮らすことばかりを考えています。
しかしそれではあなたの立場が無くなるという事も、私は、充分に
承知をしているつもりでいます。
でも、それらをすべて承知の上で一度だけ、
意気地無しのレイコが、心からお願いをいあたします。
私が辛すぎるますので、どうぞ桐生と、
私のこの胸に、一度だけ、帰って来てください。     


 あなたのレイコより 。




 そう、書いてあります。
どうしたらこんなに細かい文字が書けるのでしょうか・・・
消え入りそうほど薄いうえに、米粒にも満たない小さな文字の列でした。
一度も泣き事を吐かなかったレイコが、
その心の底で泣いているのが見えました。
背筋を一瞬、電気がはしります。 

「レイコが呼んでいる」