「仮面の町」 第十七話
「あのう・・・失礼ですが花井建設にお勤めの方でしたか?」
「はい、そうですが、なにか?」
「いえ、少々お待ち下さい・・・内線がつながるようでしたらお取次ぎさせて頂きますので・・・」
「お願いします」
弘一は最初から名乗らずに最後になって自分が花井建設のものだと解るようにして見せた。効果があったようだ。
花井建設の社長婦人は久能肇の妹だったから、受付従業員は知っていて慌てて取り次いでくれようとしたのだった。
「受付です。社長、花井建設の天木さまと言われる方がお見えなのですが、面会出来る時間はございますか?」
「花井の天木?・・・何の用事だ?聞いてみろ」
「はい、しばらくお待ち下さい・・・あのう、天木様、ご用件は何でしたでしょうか?」
「折り入ってご相談したいことがあります。事故の件だと伝えてください」
「かしこまりました。お待ち下さい・・・社長、事故の件でお話がしたいと仰られていますが、いかがなさいますか?」
「事故の件・・・そうか、じゃあここへ通しなさい。それから後30分ぐらいしたら署長が挨拶に来ると思うから話が終わるまで待つか、改めて午後から出直すかするように言って置いてくれ」
「かしこまりました。ではご案内します・・・天木様、社長室までご案内させていただきます」
「そうですか!ありがとうございます」
受付の女性の後を着いて弘一は最上階にある社長室に入った。
作品名:「仮面の町」 第十七話 作家名:てっしゅう