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Like a DIAMOND in the sky.

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「何でイオリが私をスキだと、私がイオリを嫌いにならなきゃいけないわけ。」

 え。……なんで、って。
「気持ち悪くない?」
「きもちわるくないよ。」
「だって、その……友達とかじゃなくて、それ以上に見てるっていう〝スキ〟だよ?」
 言い終えてから己の言動の矛盾に首を傾げた。
 ――これだと私、サヤカに拒絶して貰いたいみたいじゃないか?
 先ほどの言葉にはじめてマトモに考え込みだしていたサヤカが顔を上げる。なんだか色々と複雑そうな顔をしていた。
「それはつまりアレか。アタシにちゅーしてみたいとか押し倒したいとかなんかそういうことか。」
「いやゴメン、そこまで具体的な事は考えてなかった……」
「ナンだ、キスくらいまでなら許容範囲だったのに。」
「はあぁぁぁ!?」
 切り出された内容にもビックリだったが、今の発言が一番度肝を抜かれた。
 ぱかっと顎を落として絶句した私を見つめ、サヤカは何処となくさびしげに微笑んだ。
「伊織はね、知らないから、そう云うこと言えるんだよ。」
「知らないって、――何を?」
「ワタシのキモチ。」
「え……?」
 サヤカは、その場でくるりと半回転ターンを決める。
 背を向けた恰好のまま、声を風に流すように、喋り始めた。
「私は別に、伊織をそういう対象としては見てない。」
「……うん。」
「でも、一番大切な人は、伊織なんだよ。」
「はい!?」
「私は伊織しかいらない。伊織以外には、あんまり興味もてないから。でも伊織はそうじゃない。他に友達が居て、大切な人がいて。――伊織には、私だけじゃない。」
 サヤカは視線だけで振り返る。
 私をひたと見据える瞳の色は、なぜか不満そうだった。
「だからコレでも、いつか私は見限られるんじゃないかと、不安になったりもしていたわけです。君、絶対気づいてなかったろーけど。」
 呆然として呟く。
「ぜんぜん、気付いて無かったよ……」
 やっぱりね、とサヤカはあきれた顔で肩をすくめた。

「私は確かに人に興味ないけど。――君は最初から例外だったでしょ、〝倉原さん〟」

 そう言って、サヤカは片目を瞑って魅力的に笑って見せた。
 
 倉原さん、というその呼び方にハッとする。
 思い出した。
 ――確かにそうだった。
 たとえ切っ掛けは私から話し掛けた事だったとしても、あの時サヤカは、決して私に無関心ではなかった。
 人に興味が無いのだと、自他共に認めていた、植本涼という存在が。

 それはもしかしたら、
 驚異的な事だったのではないだろうか?

 今更真実に気付いた瞬間、サヤカは屋上の床を蹴っていた。
 軽い跳躍で浮き上がった躯は真っ直ぐにこちらへと突っ込んでくる。私は慌ててサヤカを抱きとめた。
 軽い、だがしっかりとした重みを腕に感じながら、その耳元へ囁いた。
「……サヤカにとっても私は〝特別〟?」
「ん、ふふふ。」
 何が楽しいのかはわからない。
 だけどサヤカは楽しそうに笑っていた。
 だから私も――つられて笑った。
「すきだよサヤカ。……大好き。」
「私も伊織がすき。……多分ね。」

 告白を終えて仰いだ空は、宝石でも散りばめたみたいに輝いて見えた。








了。
作品名:Like a DIAMOND in the sky. 作家名:金井