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おデブちゃんの肥満外来体験記

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本永先生との出会い



N大学病院は、郊外にある大病院です。家から電車で1時間半かかる場所にあります。
おデブちゃんの私は、それがとても面倒くさかったのですが
「良い運動になるよ」と母が喜んでいたので何も言い出せませんでした。
当時癌を患っていた母(その後亡くなりました)にこれ以上心配と迷惑を
かけたくなかったのです。

N大学病院はG市と言うところにあり
子供の頃から私の抱いてるG市のイメージは「辺鄙」でした。
だから駅に降り立ったとき、私は驚きました。都会の真ん中と変わらないくらい
開けていたのです。もっとも、近頃は大きな都市部はどこもそうなのかも知れません。
私はさっそく、美味しそうなラーメン屋と100均の場所に横目でチェックを入れ
HPにあった地図をプリントした物を片手に、母と共にN大学病院へと向かいました。

N大学病院は大きくてきれいな病院でした。看護婦さんの制服が白だったのも
私には外せないポイントです。が、それについては長くなるので割愛します。
言われたとおり1時間前に受付に着いて、まずは検査を受けることになりました。
一番始めに行われるこの検査は
「ホルモンバランスの不調等で太っていないか、心肥大などスポーツに
支障が出る障害が無いかどうか調べる検査」です。ようはレントゲン等です。
ここでつまずいたら、肥満外来ではなくまず内科に回される可能性は高いです。
すなわち無駄足を踏むことになるわけです。
いや、病気が見つかる訳だから無駄足では無いのかも知れませんが……。


初めて訪れた肥満外来は普通外来と同じように区切られていましたが、
奥の方で何やら行われているらしくざわざわしていました。
何だろう? と思っていると、タオルを首に巻いたスポーティな姿の男性が
奥から現れました。おそらくジムのような場所が奥にあるのではと
その時思いました(その直感は当たっていました)。
肥満外来の受付というと、おデブちゃんが一杯いそうなイメージ(まあ暑苦しい)
しかありませんが
不思議なことに明らかなおデブちゃんは私を含め3人しかいない!
それもそのはず、ここは肥満外来に特化した外来じゃないんです。
リハビリ外来、禁煙外来とかもあるそうで、ごちゃまぜになっているんです。
男に振られて以来、被害妄想的になっている私は、まるでさらし者だと
ちょっと腹を立てていたのですが
その私に母が耳打ちしてきました。
「さっきの男の人、凄かったね」
さっきの男の人とは、5分前まで後ろに座っていた、170cm130キロくらい
ありそうな男性のことでした。
隣にいたぽっちゃりな母親に凄く偉そうな物言いをしていたそうです。
事情は分かりませんが、彼も脂肪脳で被害妄想的になっているに違いありません。
俺がここまで太ったのは母親のせいだ! とでも思っているような気がします。
ちなみにその男性は通っていた10ヶ月間、2度と姿を見ませんでした。


その先生は本永先生(仮名)と言いました。年の頃は40代、ハンサムですが
人なつっこい笑顔を浮かべる、患者を緊張させない先生でした。
本永先生はレントゲン結果等を見せて、異常は無いね、と言いました。
母は病気を心配していたらしく、ありがとうございます、と頭を下げていました。
私も頭を下げました。
その時カルテに書かれた病名を見て、私は言いました。
「先生、私は肥満症なんですか」
初めて聞く病名です。先生はそうだよと言いました。そして、肥満症は
様々な病気を引き起こす立派な病名であると説明してくれました。
どうやら私は病人だったらしいのです。今まで肥満だが健康体だと思っていたのは
私のうぬぼれだったのでした。
先生は検査入院の手続きについて説明してくれました。
N大学病院の肥満外来は「肥満は病気である」との信念を元に
効率よく患者の身体検査を行うため、一泊二日の入院をさせるのでした。
その日は比較的あっさり終わり、総合受付で入院の手続きをして帰りました。