おデブちゃんの肥満外来体験記
運動指導・ジム実践編
そのスポーツジムは市営でした。やや古いですが、掃除の行き届いたきれいな
白い施設です。壁にはトレーナーさんの写真と紹介が載っていて、
やる気を感じさせます。一階がプール、二階がジムになっています。
とりあえず二階に行ってトイレに入り、それからジムの受付に行きます。
「すみません、初めてなんですけど」
二十代前半くらいのトレーナーさんがにっこり微笑みます。人好きのする
笑顔です。
「はい、こんにちは! こちら側がロッカーになります。分からないことがあったら
何でも聞いてくださいね!」
ロッカールームで着替え、鍵を腕に巻き、まずは体重を計ります。
そしてマットの上で上履きを脱いで柔軟体操。ご親切にやり方まで書いてあります。
効率の良い運動のやり方は有酸素運動→筋肉運動ですから
まずはマウンテンバイクに向かいます。
なぜマウンテンバイクかと言うと、おデブちゃんが走ると足腰を
痛めるからです。
まず初日はマウンテンバイクを三十分間。
さて、時は二〇年前に遡ります。
赤ちゃんの時大病を患った私は、四歳まで入院生活を送っていました。
そこでの私の友達は、本でした。
本が大好きな子に育った私は、退院して嫌いな通院をするとき
(注射があるから)も、おかしではなく本をねだったのでした。
すなわち何が言いたいかというと、通いたくないジムにはご褒美=本が
欲しいと言うことです。子供かあんたは。
まあ、ジムでマウンテンバイクを漕ぐ時に、ぶっちゃけ暇なのも
関係しています。
当時私は家庭教師ヒットマンリ○ーン(ジャンプ漫画)にはまっていました。
なのでマウンテンバイクにはリ○ーン片手に乗っていました。
ちなみに家庭教師ヒットマンリ○ーンとは、冴えない男子高校生ツナが
マフィアボスの末裔だと言うことで未来のボス候補にされ
教育係として殺し屋がやってくるのですがそれが赤ちゃんという
あらすじだけ聞くとよく分からない話です。
一応テレビもあったので(野球中継ばかりでしたが)、そんなことをしていたのは
私だけでした。
(あ、もちろんジム側の許可は取ってあります)
(むむう。続きが気になる)
そんなことを思いながら、本を棚に置き受付に向かいます。
トレーナーさんに機械の使い方を教えてもらい、とりあえず
足の筋肉と胸の筋肉を鍛えることにしました。
運動が終わった後、また柔軟体操です。
(さて、帰りは100均に寄るか!)
……煩悩の多い私です。
このジムには母が亡くなって引っ越すまで通っていました。
感慨深い思い出があるのです。
というのも、私、トイレは決まった場所にしか入らない人でして
このジムでもそうだったんですが
ある日行ってみたら座るところが潰れて故障中になっていたという(汗)
今でもひそかに私が壊したんじゃないかと思っています……。
作品名:おデブちゃんの肥満外来体験記 作家名:まい子