SAⅤIOR・AGENT
掃除も一通り終わって後は水で流すだけとなった。だけど……
「あれ?」
水道管を捻るけど水が出てこなかった。
「何だ。水道管がイカれたか?」
「そんな事は無いと思うけど……」
断水するなんて聞いてない、だけど水道管はウンともスンとも言わなかった。
ここも出てこないと言う事はもちろんシャワーの方も出てこなかった。さっき点検した時はなんとも無かったのに……
水が使えない事には掃除が出来ないm水城先輩が首を傾げて苦悶した。
「弱りましたね」
「仕方ない、手分けして校舎からバケツで汲んで……」
兄貴が言いかけた時だった。
突然校舎の方から放送が流れた。
「1年1組の御剣・匠君、1年2組の不破・蘭さん、至急職員室の里中までお越しください」
里中先生の声だった。
里中先生が放送すると言う事は……
「悪い、急用が入った。オレ達行くわ」
「じゃーねー」
2人は荷物を持って校舎の方へ向って行った。
結局兄貴の言ったとおり、本校舎から水を引っ張ってきて掃除をするはめになった。
全てが終わったのは6時過ぎ、生徒会室から荷物を持って来ると保健室に向った。
「失礼します」
「あら、妹さん」
里中先生は帰る準備をしていた。
「先生、やっぱり兄さん達は……」
「ええ、出撃が入ったの」
「やっぱり」
この断水は異星人による物らしい、
実はここ2日間であちこちの水場から水が無くなると言う事件が多発していた。
「いずれも人里離れた池や湖だったから探索派のセイヴァ―・エージェントに任せてたんだけど…… ついに町外れの浄水場が狙われてね、ただでさえ人手不足だから今回は調査の方にも回ってもらったの」
「そうなんですか、どうりで水が出なくなったんですね」
調査となるとそう簡単には帰って来ないかも知れない、
「お兄さんの事が心配?」
「えっ? な、何言ってるんですか? 不破さんはともかく兄さんなんか……」
「顔に出てるわよ」
「ううっ」
やっぱりこの人苦手だった。
すると薄ら笑いを浮かべていた里中先生は深くため息を零した。
「全く、こんな時に何してるのかしら?」
「えっ?」
「ああ、今度配属される事になったセイヴァー・エージェントよ、サイモンとバイスって言ってね、本当ならファーランと一緒に来るはずだったんだけど……」
この2人は兄貴や不破さんと同期のセイヴァー・エージェントで、かつて同じ班で活動していたと言う、
「ただ、2人も問題があってね……」
一体どんな人だったの?
そう思っていると里中先生は察したのか私に話してきた。
「まずはレイス星人サイモン、知能指数1万を越える頭脳の持ち主よ」
「す、すごい」
「頭脳だけならね……」
里中先生は両肩を落としながら言って来た。
何でもこのサイモンと言う人は優等生であると同時にかなりの問題児だったらしく、教官の人達はすごく手を焼いていたと言う、
「テスト用紙を盗んだり、銀河連邦軍の基地にハッキングしたり、あの子のしでかした事を数えたらキリが無いわ…… 悪気が無い分ファーランの方がまだマシだわ」
「じゃ、じゃあそのバイスって人も?」
「ああ、あの子は違うわ、すごくマジメなんだけど…… 少し肩の力が入りすぎと言うか、責任感が強すぎると言うか……」
その人は元銀河連邦軍からの引き抜きで、その影響の為か融通が利かなかったと言う、
「ヴォルフ星出身の戦闘民族だから戦闘力は群抜いていたわ。腕力だけならファーランの方が上だけど、格闘センスや総合的な戦闘技術を考慮するとバイスの方が上よ」
「でもその人も問題児なんですか?」
「サイモンほど悪い事はしてないけどね、ただ堅物で協調性が取れなくて、周囲とすぐケンカになってたわ、タクミ君とも犬猿の仲だったし……」
そんな人達が来るなんて…… 何だか地球が心配になって来た。
「ただどう言う訳かこの子達すごく仲が良いのよ…… 世の中分からない物ね」
里中先生は苦笑した。
確かに教科書人間と超問題児、TVドラマとかじゃ良く言い争いとかしてるけど、現実はそうなのかもしれない、
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki