SAⅤIOR・AGENT
「はい、ストーップ」
『ギギっ?』
爪が止まり大男が振り向く、するとそこには私より背の大きい高校生くらいの男が立っていた。顔はゴーグルで隠れているから良く見えないけど年は大体私と同じ位だろう、黒い髪に皮のジャケット、黒い皮製のズボンの彼は右手に機械で造られたバトンのような物を持って肩を叩いていた。
「そこまでだぜ、観念するんだな」
彼は目の前の不審者に臆する事が無く、また警察に通報する訳でもなく一歩前に踏み出した。
『ギガガ…… 邪魔物…… 廃除』
すると男の服が弾け飛び、現れたのは全身に白い光沢を放つ赤い1つ目のロボットだった。
『廃除、廃除、廃除』
ロボットは六本の腕を彼に突っ込んで行く、すると彼は両膝を曲げてジャンプ、オリンピック選手も真っ青の跳躍力で宙で弧を描きロボットの背後に立つと手に持っているバトンを振って叫んだ。
「βモードっ!」
バトンの先端に赤い光の粒子が溢れ出すと光の刃となった。
テレビのロボットやSF映画に出てくる…… 何だっけ、ビームサーベルみたいな武器をその手に持っていた。
『ギギッ!』
ロボットの上半身が180度回転すると腕の一本が彼の顔にぶつかろうとしていた。
「おっと!」
だが彼は寸のところで交わすが鋭い爪にゴーグルが切り裂かれて地面に落ちた。
「このメカ野郎っ!」
彼が赤い光の剣で薙ぎ払うとロボットの胴体がまるで紙を切るかのように真っ二つになった。
『……ガガガ……』
ロボットはその場に倒れると音を立てて爆発した。
「さてと」
彼は光の刃を取り消すとロボットに近づくと膝を曲げた。
後ろ向きだから何をしているのかは分からないけど突然ロボットの残骸が光の粒子となって消えてしまった。
信じられない事の連続にこれは夢ではないかと思った。むしろ夢の中にいる感覚の方が強いだろう、
兄貴が居なくなる夢以外の夢を久しぶりに見ているのかな?
彼は立ち上がると私に近づいてくる、私は身をビク付かせる、少なくともあんな事ができるんだから普通の人間じゃないのは分かった。
「大丈夫?」
彼は私の前で膝を曲げると右手を差し伸べた。そしてゴーグルが無くなり今まで見えなかった顔が月明りに照らされて見えるようになった。
「ああっ?」
信じられない事がまだ続いた。
そこに居たのは2年前に死んだはずの兄貴だった。
「嘘……」
そんな訳は無い、兄貴は2年前のスペースコロニーの事故で死んだはず、生きてるはずが無かった。
「ん?」
すると騒ぎに気付いたのだろう、民家が騒ぎ始めた。
「まずい、歩けるかい?」
「えっ? あ、はい」
彼は私を連れてその場から離れた。
やって来たのは公園だった。今は暗いので誰もいない、私は膝に手を付いて息を整えた。最近運動不足を実感した。
一方兄貴似の人は息1つ乱してなかった。そして私を見ると頭から爪先までを見下ろした。
「どこも怪我はないかい?」
「あ、別に…… 貴方が助けてくれましたから……」
私は手を振る、
「そうか、良かったよ。女の子に怪我させたらどうしようかと思ったよ…… あ、そうそう……」
兄貴と同じ顔、兄貴と同じ声、兄貴と同じ人(?)が目の前にいる、そして一呼吸置くと彼は言って来た。
「電話番号教えてくれねぇ?」
「はぁ?」
時間が止まった。今何て言った? 電話番号?
「どこに住んでるの? この辺の子? 暇ならこれからお茶でも……」
「こ、この馬鹿野郎っ!」
私は右手で拳を作るとこのナンパ野朗の顔面を殴り飛ばすと地面に倒れた。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki