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 私達は水城先輩を自宅まで送る事になった。
 本来バス通学の私が付き合う必要は無いし、本来は里中先生が車で送るのだけれども今度の事件の事を調査する為に手が離せず、私に手伝って欲しいと頼んで来た。
「本当にごめんなさい、2人供私の為に……」
 水城先輩が申し訳なさそうな顔をした。
 やっぱり自分の事に巻き込んでしまった事を気にしているのだろう、
「いーっていーって、アタシはセイヴァー・エージェントだから」
「私も、乗りかかった船ですから」
 それに保健室を出る時に『少しで良いからファーランをサポートしてあげて欲しいの、見てのとおりの子だから心配で』と言われてしまった。よくセイヴァ―・エージェントになれたものだと思った。
「そこの曲がり角を進むと私の家です」
 水城先輩が指を示す、
 だがその時だった。
 私達の背後から大きな音が聞えたので振り向くと、スピード制限を無視した1台の乗用車が突っ込んできた。
「ああっ!」
 明らかに私達…… と言うより水城先輩を狙っていた。
「2人供下がって!」
 不破さんは前に出ると両手を突き出すとものすごく鈍い音が響いた。
 私と水城先輩は反射的に両目を両手で塞いいだ。うっすら空けた指の隙間から覗いてみると暴走する車を押し留めていた。
「うぬぬぅ〜〜っ!」
 不破さんは真っ白な歯を食いしばりながら両足を踏ん張った。まるで一昔前の漫画の様な光景だった。
 しかし車の方はそのまま止まる気配は無くタイヤを回転させ、ほんの少しづつだけど不破さんが押されていた。自販機を持ち上げる不破さんでもさすがに突進してくる車は辛いんだろう、靴底を減らしながら額に玉のような脂汗が浮かんだ。
 このままじゃ人に見つかる可能性が高いし、不破さんだってただじゃ済まない、不破さんもそれは分かっていたのだろう、最後の勝負に出た。
「うりゃああ―――っ!」
不破さんはバンパーを掴み、上半身を捻ると車が横転、天井とタイヤが反対になって動かなくなった。
 その光景に水城先輩は目を皿のように丸くして両手で口を抑えていた。私は今朝も見たからそれほど驚きはしなかったけど、やはり声が出なかった。
 確かに凄いと言えば凄い、任務である水城先輩を守ったけど……
「ちょっと不破さん、少しやりすぎよ!」
「え? あ、そうか。中の人目を回しちゃうよね」
 目が回るだけで済めば良いんだけどね、
いくらストーカーとは言えヘタしたら大怪我してるかもしれない、
 不破さんは運転席のドアを開いた。
「このストーカー野朗っ! 観念しなさ……」
「どうしたの?」
 不破さんは車の中を覗いて大きな瞳をパチクリさせているだけだった。
私達も恐る恐る近づいて見るとその理由が分かった。
「えっ?」
 車は誰かが運転しなければ動くはずが無い、だけど車内は物気の空だった。信じられないけどそれは事実だった。
「どうして?」
 私は訳が分からなかった。
 一体犯人はどこに消えたのか、謎は深まるばかりだった。