SAⅤIOR・AGENT
私が言葉を無くしていると先生が続けてきた。
「宇宙には様々な惑星が存在してるの、その中で生命体が生息出来る惑星はごく少数わずか、地球もその内の1つなの」
良くSFとかで聞くセリフだった。
「だけど残念ながら宇宙に住む人々全てが平和を望んで生きている訳では無いの、残念な事に人の幸せを踏みにじる悪意を持つ異星人達も少なくないわ」
私も実際襲われたから分かる、
色々いるのは地球人だって同じだった。
「そこで誰しもが等しく生きて行けるように良識のある人々が『宇宙平和連合』を設立し、惑星平和条約を敷いた」
そして異星人による犯罪を撲滅し、星の平和を守る為に3つの組織が作られた。
1つは宇宙平和条約を受け入れた惑星を守護する宇宙警備隊、
もう1つは危険と判断された惑星を異星人事撲滅する宇宙連邦軍、
最後が宇宙平和条約を結ぶ前の惑星の文明を調査し、逃げ込んだ異星人犯罪者達や悪事を働く異星人達を検挙する宇宙密偵団体、つまりそれがセイヴァ―・エージェントだった。
ただセイヴァ―・エージェントと言っても能力や特徴や相性によりいくつもの派閥に分類されているらしい、
1つは現場にて異星人犯罪者と戦い検挙する戦闘派。
1つは異星人との交渉や犯罪、さっき言った宇宙平和条約未登録惑星を調査する探索派。
1つはそれらの武器やサポートアイテムを作り出す技術派だった。
ちなみに兄貴は戦闘派、里中先生は調査派で、私のセイヴァ―・ブレスは技術派が作ってくれたと言う、
「地球みたいに惑星平和条約を結ぶ前の非加盟惑星は犯罪者達の恰好の逃げ場であり狩場なの、先の2つはあくまでも条約を結んだ星で無いと活動できないしね」
宇宙警備隊も宇宙連邦軍は休暇か特命が無ければ平和条約非加盟惑星に入る事は出来ないと言う、
前者の場合は身柄を拘束する事は出来るが逮捕の権限は無くその地域のセイヴァ―・エージェントに引き渡され、勿論後者の場合はセイヴァ―・エージェントがその特命に達合うと言う、
異星人が他の星に逃げ込むのは要するに日本人が犯罪を犯したら海外へ逃亡する…… みたいな感じか、あれって確か犯罪者引渡しの条約が無ければ捕まえる事ができないんだっけ?
「ただセイヴァ―・エージェントと言ってもこの辺にいるのは私とタクミ君を含めて数名しかいないから、しばらくは彼に頑張ってもらうしかないわね」
「ちょっと待ってください!」
私は疑問があった。
それはなぜ極秘裏にしなければならないかだった。凶悪な異星人なら地球人側に要請を頼めば済むだけのはず、
「もちろん、協力を要請する場合もあるわ。ただ誰もって訳にもいかないの、言っちゃ悪い事だけど…… 平和条約非加盟惑星の中に居る心ない者達が異星人の事を知れば、その星の生態系に大きな異常を齎す場合があるの、私達はそれを求めないわ」
協力を要請する一部の人間はよほどセイヴァー・エージェントに信頼された人間でなければならないと言う、
私ってそんなに信頼されてたんだ。
「それに異星人とのコンタクトは簡単な物じゃなくてね、交渉に失敗して星同士で戦争が起こり、惑星が消滅してしまうと言う事も珍しい話しじゃ無いのよ」
さらりと怖い事を……
そこで宇宙平和連合は惑星平和条約非加盟惑星に調査員を派遣、惑星の文化レベルが交渉できる判断した時のみ非加盟惑星に平和条約の交渉ができる言う、
「上の判定では地球はまだ幼すぎると判断されてるわ、あと1000年は惑星平和条約は無理ね」
気が遠くなる話だった。どうやら私はその条約を見れないらしい、
なお惑星平和条約が結ばれるとその惑星に存在するセイヴァー・エージェントは全て退去し、代わりに宇宙警備隊が後釜として配属されると言う、
私の頭にある想像が走った。もしそうなったら兄貴は……
そんな事を思っているのを察したのか、兄貴が言って来た。
「俺は条例結ぼうが結ぶまいと残るよ。地球人だからな」
「それっていいの?」
「ええ、ただしセイヴァ―・エージェントは辞めてもらう事になるけど、宇宙平和条約に加盟した後ならばなんの問題も無いわ」
「そ、そうですか……」
良かったと、ホッとした時だった。
「でも妹さん、これから言う事は貴女の胸に仕舞って置いてね」
里中先生の顔から笑みが消える、
途端私の背筋が寒くなった。
「貴女が左腕につけているセイヴァー・ブレス、これはセイヴァ―・エージェントが事情を話す事が出来ると信頼した人間に与えられるものなんだけど、それには通信機や発信機の他にも色々な機能が内蔵されているの」
危険な目に合った時に自動発動する電磁障壁(バリア)発生装置、高い所から落ちたり重い物を持ち上げる重力制御装置、火災になった場合の消化ガスなど様々な効果がついていると言う、何だか無駄な気もするけど……
「異星人の存在が明るみに出た場合はセイヴァー・エージェントが辺りの人間の記憶を消す事になってるんだけど…… そのブレスをつけてれば記憶消去電波を打ち消してくれるわ」
ようするにこれさえ持ってれば記憶を消されずに済むと言う訳か、
「でももし、もしもの話だけど…… ブレスを持つ者が異星人の存在を話そうものなら、ブレスに内蔵された記憶消去装置が発動、その人が持つ異星人に関係する全ての記憶が消える事になるわ」
「えっ?」
私は兄貴を見る、
異星人に関する全ての記憶、
それは兄貴も含まれている、先生の話からすればこの地球が平和条約を結ぶまで兄貴は帰って来れない、となれば私はまたあの暮らしに戻ってしまう、
兄貴は紅茶を啜ると一息置き、
「そんな深刻な顔すんなって、お前が正体バラさなきゃ良いんだし、もし何かあったら俺か千鶴ちゃんに知らせてくれればいいんだよ」
「う、うん……」
私は頷いた。
作品名:SAⅤIOR・AGENT 作家名:kazuyuki