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Episode16,星の守人

 

 兄貴達が出て行った後、私は表でずっと待っていた。
 携帯電話の時計を見るとあと30分で0時になろうとしていた。
 今回は戦闘はなるべく回避すると言う決まりだったけど、ここまで時間がかかってるって事はやっぱり戦ってるって事だろう。
「兄さん……」
 私はブレスを握りしめた。
「妹さん」
 マンションから里中先生が出て来た。
「少し休んだら? 明日も学校でしょう?」
 明日があれば、だけどね……
 だけどそんな気になれなかった。
 多分家に帰ってベットに入っても同じだろう、だったらここで待ってた方がまだマシだった。
「女子高生がこんな時間外に出てたら警察に補導されるわよ」
「ええ、でもあと少しだけ……」
 私は以前兄貴に半日以上待ちぼうけをくらった時の事を思い出した。
 正直待つのには慣れた。ただ問題は帰って来るかどうかだった。
 そう考えている時だ。突然空が明るくなると金色の球体が私達の目の前に降り立った。
 光が晴れると現れたのは三葉さんと塩田さんだった。
「サイモン、塩田さん!」
「無事だったんですね!」
 私は胸をなでおろした。
 だけどやがて兄貴達がいない事に気がついた。
「三葉さん、兄さんは?」
「最後の仕上げに行ったよ…… オレ様も直ぐ行かなきゃいけないから、この娘頼むぜ」
 そう言いながら三葉さんはマンションの中に入ろうとした。
 だけど里中先生が三葉さんを止めた。
「待ちなさいサイモン、ちゃんと報告をしなさい」
「ああ…… 時間ねぇってのに……」
 三葉さんは頭を掻きながら言って来た。
 オメガのアジトであった事、兄さん達がオメガの兵器を叩き潰しに行った事、そしてゼルベリオス本星の援軍が狙われてるって事も全て話した。
「そう言う訳だ。援軍の事はチヅルちゃんが話しておいてくれ、オレ様はあいつらの応援に行って来る、彼女を送ったついでに忘れモンを取りに来ただけだからな」
 そう言いながら三葉さんはマンションの中に入って行った。

 私は塩田さんを見た。
 制服が埃だらけで、頬が赤い以外の外傷はない、だけど凄く落ち込んでいた。
「あ、あの…… 塩田さん?」
 私は声をかける。
 するとどうだろう、塩田さんは私の顔を見ると顔をしかめて瞳に涙を浮かべた。
「ううっ……」
「し、塩田さんっ! あの…… もう大丈夫だから!」
 よほど恐い目にあったんだろう。
 私は精いっぱいフォローする。
 すると塩田さんは両手で顔を塞ぎながら首を横に振った。
「……違います、私、私……」
「……どうやら気づいたみたいね」
 すると里中先生が塩田さんの前に出て両肩に手を乗せた。
「貴女は分かったのね、正義に必要なのが何かを……」
 すると塩田さんが頷いた。
「……私、何も分かってませんでした。一体何の為の正義なのか…… そんなの考えれば分かる事だったのに……」
「それだけ分かれば十分よ、貴女は若いんだし、これからどうにかして行けばいいわ」
「……はい」
 塩田さんは小さく頷いた。
 私は彼女を見ながら安心した。こっちはこれで終わり、あとは……
 私は星空を見た。
(お願いね、兄さん)
 私は心の中から願った。