「仮面の町」 第十六話
「ああ、陽子さんの態度を見て考えさせられたよ・・・任せてくれ」
「心強いです。きっと成功して見せます・・・優子、子供に誇れる父親になるからな」
「うん、楽しみにしてる。でも無理はイヤよ・・・何度も言うようだけど」
「大丈夫だから・・・」
「優子!子供って・・・ひょっとして?」
「話してなかったかしら・・・お腹に赤ちゃんが居るの今月で4ヶ月目なの」
「ほんと!お母さんになるのね。素敵だわ・・・なんだか弘一さんといい、赤ちゃんといい、優子が本当に羨ましい」
「ありがとう・・・でもまだまだこれからが大変。解らないことばかりなんだから」
「おば様に聞けば解るじゃない。仕事なんか辞めてゆっくりすればいいのよ」
「そうしたいけど、まだ動ける間は仕事続けようと思っているの。身体がなまっちゃうといけないから」
「無理しないでよ、あなたこそ一人じゃないんだから」
「そうね、そうする」
山崎の手帳を手に弘一はこれからのことを考えていた。長井医師の検死結果も自分なりに文章にまとめた。久能に見せるためにだ。
手帳を開いて山崎警部の自宅へ電話を掛けた。
作品名:「仮面の町」 第十六話 作家名:てっしゅう