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しっぽ物語 10.青ひげ

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「それで、ネタのなくなった彼には、今週末の慰問の記事を書かせたらいい」
「土曜日だ。お前もちゃんと来いよ」
眼の端を吊り上げたまま、Lは息子に言った。
「前々から言ってあったからな。用事が出来たとは言わせないぞ」
「分かってるって」
Fは苛立ちも露に言葉を返す。
「うちの人間は嘘が得意だから、屁でもねえさ」
 
まるで魂が抜け出してしまったかのように、今の光景を天井から見下ろす自分がいることを、Gは途切れつつある集中力の中で確かに感じていた。
LとFは、とてつもなく哀れだった。
そして、こんな二人に形だけの情けをかけられる天使は、輪をかけて不憫だった。確かにLの言葉は間違っていない。今現在Gが知る中で自尊心の最下層にいるのは、間違いなくあの女だろう。
身寄りがないのなら、世話をしてやるのもいいかもしれない。包帯を巻かれたせいで顔はおろか髪の色すら思い出せないが、なかなか良い造作だったように思う。
ぼけた表情で涎を垂らす女に無理やりヴァージンロードを歩かせ、祭壇に立つBの、哀れで愛しい息子の前で愛を誓う自らの姿を想像した時、Gはここのところ久しく感じていない、痛いと言っていいほどの爽快感が全身を駆け巡るのを感じた。