小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アイラブ桐生 第4部 49~50

INDEX|9ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 


 また、尾根伝いに眺望が開けてきました。
サントリーの山崎工場を見下すことが出来るちょっとした広場で
遅めの昼食をとることにしました。
「おちょぼが、お千代さんが朝早くから用意をしてくれた
お弁当をひろげます。
山頂からは、だいぶ歩いてきましたが、
ここにもほとんど人目はありません。


 「おちょぼ」が、煮ものを箸でつまんでいます。



 「お兄ちゃん、お口を開けて、あ~んをしてください。」


 含み笑いをして、おちょぼが迫ってきました。
「こら、はしたない。人さまが見たら行儀が悪いと思うだろう」
とたしなめると、おちょぼはまったく涼しい顔をしたまま、
ゆったりと周囲を見回します。
「どなたもおりませぬ。心配することなどはあらしません」
と、意に介しません。

「格式の煩い祇園のお座敷では、
そんな過剰なサービスは絶対しないだろうに、」
と反論をすると、

「ほんに・・・・小春姉さんに知られたら、しこたま叱られますぅ」と、
今度は一転して、コロコロと笑いこけています。
それでも、「今日だけは、特別ですさかい、)と、さらに執拗に
すこぶる嬉しそうな顔で迫ってきます。


 結局、根負けをしてしまいました・・・・


 稜線からの登山道と別れをつげました。、
ここから麓の小倉神社まで下っていく小路は、そのほとんどが竹林の中です。
竹林の中を辿る小路も、実に良く手入れが行き届いています。
小路の両脇には、どこまでも行っても竹の垣根が続いています。
そこぶる安全な下り道になると思って油断をしていたら、思いがけないところで
本日最大の難所が待っていました。
小路が大きく右に曲がり込みながら、その先に急峻な斜面が現れました。
ちょうど竹林の中を、約半分ほど下ってきた処です。



 日陰になっている辺りが雨上がりのように濡れていて、
足元が滑りそうな気配がします。
見た目以上に、難所となる急坂でした。
滑らないようにと「おちょぼ」の手を引いてやり、足元を確かめながら
歩幅を狭くして、ゆっくりと下り始めました。




 遠くからは、かすかな瀬音も聞こえてきます。
脚を止めて前方を伺がうと、斜面を下りきった先に、
小さな橋が見えています。
その橋を渡れば、前方には小倉神社があるはずで、
そこが登山道のゴールにもあたります。
境内にある大きな杉の木とモミの巨木は見えましたが、
赤い社殿の屋根は、深い緑に囲まれたままで、
ここからは見ることができません。

 もうひとつ、竹林越しの茂みの間から、
かすかに確認が出来たのはシンボルとされている
境内にそびえた、ペアの御神木のようです。


 濡れた斜面ももう少しというところで、
「おちょぼ」が、足を滑らせました。