打算的になりきれなかった一週間
「知らなかったんだもの。翔大のせいじゃないわ。第一彼女も言うべきだったのよ」
「あはは。お前と違って、大人しい子だったからなぁ」
裕美はムキになったように
「私だって大人しかったけれど変われたわ」
「うん。……でもさ、俺、寿絵のこと悪く言いたくないんだ」
正直な気持ちだった。裕美はばつが悪そうに瞬きをすると、まあ、良いけど、
と箸袋をいじりだした。もう行こうか、そう促すとトレイを持って立ち上がる。
トレイを回収する場所に置くと、裕美は出入り口を探してきょろきょろする。
俺はその手を引こうと手を伸ばしたが、裕美は右手を引っ込めた。
「……あ」
「ごめん」
戸惑う裕美に笑いかけると、あっちだよ、と指をさす。
その笑顔が引きつり気味だったのは、仕方のない事だと思う。
作品名:打算的になりきれなかった一週間 作家名:まい子