父の恋人 後半
結局、父さんは次の日も家には帰ってこなかった。無事に『ケイコちゃん』に会えたのか、ケイコちゃんの代わりの誰かを見つけてその人の家にいるのかは分からないけど、私がいくらメールしても父さんからの返信はなく、家庭訪問は当然のようにすっぽかされてしまった。
うちに来てくれた担任の白川先生には、おばあちゃんが対応してくれた。おばあちゃんはいつものように父さんのことを「あのどうしようもない人」っと言いながら、一言返事で家に飛んで来てくれた。
白川先生は若くてキレイな先生だ。その白川先生が家に来るというのに父さんが帰ってこないなんておかしい。
きっと、今日に仕事を休みにしておいたのが仇になったんだね。
キレイでお上品な白川先生が帰った後、おばあちゃんは呆れたようにそんな風に言った。
おばあちゃん曰く、父さんはとっくの昔に亡くなってしまったおじいちゃんによく似ているそうだ。大してカッコいい訳でもないのに女性にモテて、女の人だったら誰でもいいみたいにどんな人の後ろにくっついていく所はおじいちゃんにそっくりだとおばあちゃんは言う。
「でも、そんなおじいちゃんがいいなっと思って、おばあちゃんは結婚したんでしょ?」
「騙されてたのよ。松倉さんと先に出会っていれば、おじいちゃんとは結婚してなかったわ。私にも未熟な頃があったってことよね」
松倉さんはおばあちゃんの二十年来の恋人で、五年前から二人は一緒に暮らしている。松倉さんは背の小さい、笑うと可愛い優しい人だ。おばあちゃんと松倉さんは、二人で一緒にいると、とても幸せそうに見える。
「皆、父さんのどこがいいんだろうね」
「ホントねぇ」
私とおばあちゃんは揃って、はぁぁっと大きくため息をついた。
夜、おばあちゃんは松倉さんの所に帰っていったので、私は一人でテレビを見ながら父さんの帰りを待っていた。でも、もう十時だ。もしかしたら、父さんは今夜も帰ってこないつもりなのかもしれない。そう思ってちょっと不安になったので、私は土曜日までの宿題をやって気を紛らわすことにした。
今日の家庭訪問では、白川先生にまあ子さんはしっかりと宿題をやってきていて関心です、と褒められた。白川先生の声は優しい。怒っていても優しいから、きっと白川先生は穏やかないいお母さんになるだろうなっと思う。
私がそんな風に白川先生がお母さんだったらの考えを色々と膨らませていたら、電話が鳴り出した。慌てて椅子から飛び降りて電話口に走る。
「もしもし」
「もしもし、西野さん?」
「あっ、はい、そうです」
電話口の相手は白川先生だった。あんまりにも先生の事を考えすぎて、その事が先生に伝わっちゃったのかもっと私はドキドキした。
「今、お家には西野さん以外の方いるかしら?」
「いいえ。今は私一人です」
「そう……」
電話口の先生はいつもの優しい声を少し曇らせて、沈黙した。
どうしたんだろう? 何か、あったのかな? っと心配になる。
うちに来てくれた担任の白川先生には、おばあちゃんが対応してくれた。おばあちゃんはいつものように父さんのことを「あのどうしようもない人」っと言いながら、一言返事で家に飛んで来てくれた。
白川先生は若くてキレイな先生だ。その白川先生が家に来るというのに父さんが帰ってこないなんておかしい。
きっと、今日に仕事を休みにしておいたのが仇になったんだね。
キレイでお上品な白川先生が帰った後、おばあちゃんは呆れたようにそんな風に言った。
おばあちゃん曰く、父さんはとっくの昔に亡くなってしまったおじいちゃんによく似ているそうだ。大してカッコいい訳でもないのに女性にモテて、女の人だったら誰でもいいみたいにどんな人の後ろにくっついていく所はおじいちゃんにそっくりだとおばあちゃんは言う。
「でも、そんなおじいちゃんがいいなっと思って、おばあちゃんは結婚したんでしょ?」
「騙されてたのよ。松倉さんと先に出会っていれば、おじいちゃんとは結婚してなかったわ。私にも未熟な頃があったってことよね」
松倉さんはおばあちゃんの二十年来の恋人で、五年前から二人は一緒に暮らしている。松倉さんは背の小さい、笑うと可愛い優しい人だ。おばあちゃんと松倉さんは、二人で一緒にいると、とても幸せそうに見える。
「皆、父さんのどこがいいんだろうね」
「ホントねぇ」
私とおばあちゃんは揃って、はぁぁっと大きくため息をついた。
夜、おばあちゃんは松倉さんの所に帰っていったので、私は一人でテレビを見ながら父さんの帰りを待っていた。でも、もう十時だ。もしかしたら、父さんは今夜も帰ってこないつもりなのかもしれない。そう思ってちょっと不安になったので、私は土曜日までの宿題をやって気を紛らわすことにした。
今日の家庭訪問では、白川先生にまあ子さんはしっかりと宿題をやってきていて関心です、と褒められた。白川先生の声は優しい。怒っていても優しいから、きっと白川先生は穏やかないいお母さんになるだろうなっと思う。
私がそんな風に白川先生がお母さんだったらの考えを色々と膨らませていたら、電話が鳴り出した。慌てて椅子から飛び降りて電話口に走る。
「もしもし」
「もしもし、西野さん?」
「あっ、はい、そうです」
電話口の相手は白川先生だった。あんまりにも先生の事を考えすぎて、その事が先生に伝わっちゃったのかもっと私はドキドキした。
「今、お家には西野さん以外の方いるかしら?」
「いいえ。今は私一人です」
「そう……」
電話口の先生はいつもの優しい声を少し曇らせて、沈黙した。
どうしたんだろう? 何か、あったのかな? っと心配になる。