「哀の川」 第三十一話
「もしもし、斉藤ですが・・・あっ!杏ちゃん?こんばんわ。今代わりますね」おじいちゃん、杏子さんから電話!と呼びに言った。
「はい、こんばんわ。元気かい?仕事一人でやっとるから心配しとったんやで。ならええけど、母さんに代わるわ」
父親は何か話し辛そうだった。純一は杏子から聞いた昔の言葉をかすかに思いだしていた。
電話口に母親が出た。
「杏子か・・・どないしたん?ええ?こっち来るの?そうか、父さんも喜ぶわ。いつや?ん?来週の水曜日か?・・・まってや、ああ、かまへんわ。ん?車で新神戸まで迎えに行くさかいに。気つけておいでや。ほな切るで」
純一にも杏子が来週水曜日にここへ来ることを話した。ちょっと楽しみに感じた。少し会っていなかったから、話がたくさん出来ると心待ちにしていた。杏子は実家へのお祝いの品物を幾つか買い、泊まる準備をして新幹線に乗った。杏子も携帯を持っていた。純一に電話をした。
作品名:「哀の川」 第三十一話 作家名:てっしゅう