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最後の魔法使い 第二章 『学者さん』

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ジュダはうなずいた。「おとぎ話なんかじゃないんだよ。実在していた、アッパーとロウアーの両方の力を持っている一族だったんだ。」ジュダが答えた。「おとぎ話として伝えられているのは、人々は魔法使いがいるのを知ってはいたけれど、彼らがどんな種族なのか知らなかったからなんだ。政府はね、恐れているんだよ。…この国の政治の構造はわかっているよね?」
アレンはうなずいた。「『アッパーは政り、ロウアーは地を耕す』、ですよね。学校で習いました。」
「そうだ。なんでだか、わかるかい?」
ジュダの問いかけに、アレンは首を振った。学校ではそれ以上質問することは許されていなかったからだ。ジュダは苦い顔をして、小さく首を左右に振った。
「アレン、わたしはね、歴史学者なんだ。この国の人々は過去に何があったか、全く学ぼうとしない。システムに疑問を感じたときに、その答えを見つける術がないと、この国は何も変わらないと私は思う。」ジュダはアレンの目を見据えて言った。「歴史はその術の一つだ。覚えておいて。」
ジュダは咳払いをすると、リカーを一口飲んで、ゆっくりと話し始めた。
「…むかしはもともと、『アッパー』『ロウア―』なんて言い方はしなかったんだよ。『火の人』『地の人』と区別されていたんだ。昔はそれなりに外敵がいたから、コミュニティを守る人が必要だった。外から攻撃があった時、『火の人』は自分たちの力は人々を守るのに一番適していると知った。「地の人」の魔法は時間がかかったら、攻撃するのには向いていなかったんだ。そこで、役割分担をしたわけだ。「火の人」はコミュニティの番人であって、守衛となったんだ。「地の人」は食べ物や水を作り続けた。やがてコミュニティが大きくなると、システムが必要になる。お互いが生活するためには、統治する人が必要になる。どちらがコミュニティを守るのに重要か、答えは明確だった。『火の人』だ。『火の人』が政治をすることになって、やがて『火の人』の子孫たち―政治をするという特権を持って育った人たち―は「地の人」を下流の者だと馬鹿にするようになった。『ロウア―』はそのことからの言葉だよ。今ではみんな普通に使っているけれど、昔は差別用語だったんだ。さて、どうして君が逃げなければいけないのか。理由はまさにこの国の政治システムだ。アッパーは、魔法使いが彼らから政治権を奪おうとするんじゃないかと恐れているんだ―彼らが政治権を持っている理由はだた一つ、『火の魔法』が使えること、だからね。両方兼ねそろえた魔法使いが、アッパーは怖くてしょうがないんだ。だから、君の存在を知ったときは、政府はさぞかし驚いただろう。なんせ、政府は18年前に『魔法使いの街』を全滅させたんだから…。」

アレンは眼を丸くして尋ねた。「…それってどういうことですか?」