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Life and Death【そのろく】

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 雨が降りそうだな、と佐佐木原は思った。雨が降ると、山奥から歩いて帰るのはしんどい。まあ、いい運動になるだろうと無理矢理にでも思うことにした。
 幸運にも山を降りるまでに雨が降ることはなかった。タクシーを捕まえてめぞん跡地への道筋を説明する。
 しかし、都市伝説の真偽が判明した時ほどに、落胆する時はない。その多くは嘘かでまかせであることが多いからだ。
「……アレは?」
 ふと、外に眼をやると、救急車が止まっていた。
「ああ、アレですね。話が入ってきてますよ。どうも交通事故らしいです。錯乱した女性が飛び出してきて、轢いちゃったって話です。怖いですねぇ、責任は運転手になっちゃうんですから」
「錯乱、ですか……」
「ええ、何でも『来るな、来るな』と叫んでいたようです。酷い状態だったみたいですけど、何とか生きているみたいですよ」
「酷い状態、というと?」
「右腕が車輪に巻き込まれましてね。ありゃ切断ですよ」
 怖い話だ。乗るにしても歩くにしても、交通事故には気をつけたいところだ。
「ここでよろしいでしょうか?」
「ああ、すみません。ありがとうございます」
 そう言って、佐佐木原はタクシーを降りる。このボロアパートで今日起こった事件のことなどつゆ知らず、いつものように佐佐木原はボロアパート、めぞん跡地へと帰宅した。