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Life and Death【そのろく】

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そのろく「何処を、ほっつき歩いていたのですか」


「で、その話の続きなんですけどね」
 まだこの話は続くのかと、彼は思った。
 正直、この会話の内容にはあまり乗り気にはなれなかった。というのも、普段は訳知りの親父と無言で売り場を回るのだが、今日に限ってその親父は出勤していないのだ。理由は知らない。聞いていないのだ。だからこうしてバイトの世間話に付き合っているわけだ。
 因みにこのバイトはそういった都市伝説やオカルト話を好み、彼が耳栓を忘れた夜に『人が殺された』だの『自殺者が出ただの』と噂をしていたのは彼であった。
「その腕を買い取った宗教団体があるそうなんですよ。ほら、昔レジャー施設を建てようとして結局放棄したあの山、あそこを根城にしているとか何とか」
 そのバイトは彼の横に寄り添う。すぐ真横、彼の右側に立って歩いている。
 基本的には警邏は二人一組で行う。それは、不審者を発見した時、危険を最小限に止める為だ。一人に対して二人なら安全に拘束できるし、族が二人であった場合のリスクを抑えることができる。少なくともこの警備会社のマニュアルではそうなっている。
 相手が徒党を組んでいた場合は、まあその場合は応援が来るまで如何に耐えるかという問題だ。
「そしてですね。最近、この辺で右腕のない死体が見つかったそうなんですよ」
 ふと、そのバイトの語調が変わる。
「まさか、お前が言うその団体が殺して腕を奪ったとか言うんじゃないよな?」
「そのまさかなんですよ。なんでも、団体内で不和が起こったとかなんとか。その為に信仰を強固にする為に『象徴』が必要になったとか」
 嫌な予感がする。
「で、ここから本番。そいつはですね。探しているわけですよ。自分の右腕を。死んだことも気付かずに、ゆらゆらと夜を徘徊する右腕のない死人なんです」
 そいつは右腕を見せないまま、彼と共に警邏を行う。
 ――それは気付いてはいけないことだと彼は考える。気付かないふりしてそのバイトと夜の見回りを続けるのだ。
「自分が生きているのか死んでいるのかが分からないって、悲しいことだと思いませんか?」
 その台詞は誰に対して言ったのだろうか。バイトは不気味な笑いを浮かべる。
 ――それは、数ヶ月前、彼がキングクリムゾンで酔っ払う前の日の話であった。