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Rock Against Damn mind

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第一 発足



飛鳥は中一からいじめにあっていた。現在の高二にいたるまでそれ続いていた。その原因は地元の高校に彼女が行ったからだった。
彼女はそこの学園祭に中三の夏にいきバンドの演奏のクオリティが良かったという理由で地元の高校に行くことにした。学力はそこそこあり、偏差値もそれほど高くなかったこともあり綽々と合格した。
 彼女はもちろんいじめの危惧があったが、今まで耐えてきたのでそこは我慢した。しかしある日とうとう彼女は耐え切れず状況を変えるため動き出した。高二の夏のことだ。
 飛鳥は教室のドアを開けた。途端にいくつもの紙飛行機が飛んできた。それらはすべて唇に当たった。机に座る男子三人組が飛鳥をみて笑っている。
 「おおう。はよーっす。飛鳥さん、いい髪形ですね」
彼女は無言で通り過ぎようとした。そこへ、三人組の一人が立ちはだかった。
 「すみませーん、ここは合言葉がないと通れませーん」
二人がげらげらと笑った。飛鳥は引き返そうと踵を返した。すると別の一人が立ちふさがった。
 「すみませーん、こっちもでーす」
 机に座る一人が口を開いた。
 「飛鳥さん、飛鳥さん、合言葉はさしすせそサンシチセブン、ですよ」
ささやき声でそういった。
仕方なく飛鳥はそういった。いやいや、恥ずかしげに。爆笑が起きた。そのとき教室は静まり返っていた。飛鳥が合言葉をいうと大多数の人々が大口を開け飛鳥をじっと見るかちら見して笑った。
 滑舌がわるく、さ行がいつも変になるのだ。
 飛鳥はかああっと体が熱くなりどうしようもなく自分が惨めに見えた。チャイムが鳴った。先生が入ってくると空気は一変して、みんな席に着いた。飛鳥は机を凝視して決意した。先生に相談しようと。
その放課後、彼女は精神をすり減らして、生徒相談室に行った。
先生は待っていて、早速彼女は相談に入った。
 「宮林、相談って勉強かそれとも部活?」
 先生は朗らかな表情でそういった。
 「違います。・・・・・・実はいじめがあるんです。私いじめを受けてて、もう耐え切れなくて、先生にどうにかしてほしいんです」
 飛鳥が切実に訴えると、先生は困ったような顔になった。
 「そうか、いじめか。うーん・・・・・・これはみんなの話を聞かないとなあ。本人はちょっとした冗談のつもりかもしれん」
 「そんな!本当ににいじめですよ。苦しいんです」
 先生は困惑した表情のまま、 
 「これはどうにも。とりあえずみんなに個別で訊いてみるから。先生これから部活なんだ。試合も近いし。だからまた、な」
 先生は立ち上がった。飛鳥も立ち上がった。彼女はショックに心を浸しつつも訴えた。
 「先生、お願いします」
 「わかってる。なんとかする」
 結局もやもやしたまま終わった。その後数日待ってみたものの事態は変わらなかった。
 彼女はある夜、インターネットでチャットをした。
 「そっちの学校ってどう?」
 久々に話す友達だった。
 「こっちはねえ、いじめもないしふ不良もいない。先生も生徒もみんないい人だよ」
 彼女は愕然とした。学校によってやっぱり違うのだと彼女は思った。彼女は自分のギターを見つめた。小さいころから愛用するギターだった。高校の入ってから部活には入っていない。家に帰るといつも決まってギターを弾いた。
 そうだ・・・・・・ギターがあるじゃん!
 彼女は笑みを浮かべた。彼女は明日軽音部の部室に行くことを決めた。ちょうど明日木曜日は彼女を高校に引き寄せたバンドが練習する日だった。ボーカルがギターをやっていたしチャンスだと思った。いきなり押しかける不安もあったし相手が高三なので少し緊張もする。ただ、話せば、演奏させてもらえばわかってもらえると思った。
飛鳥はギターを背負って登校した。いつもより早く行き皆が殆どいない時刻に学校へ着いた。飛鳥は大切なギターを教室に持ち込むわけにはいかない。大切なギターに何をされるかわからない恐怖があった。
彼女は車を探した。黒いセダンは・・・・・・あった!
担任の車だ。彼女は昇降口で上履きに履き替えると、二階の職員室に向かった。 辺りは静まり返り、足音が響いた。
職員室の扉を開けると挨拶をして担任の元にいった。丁度コーヒーを啜っていた。
「ん?早いな。何だ?」彼の顔には何色もない。
「いじめのことなんですけど」
担任の顔がさっと曇った。といってもごくわずかの変化だったが。
「何とかなりそうなんで」
担任の顔はすっと色が抜け、安堵の感じが仄かに現れた。
飛鳥はギターを差し出した。
「なんだ?」
と担任は軽く驚きを見せた。
「解決のためにこれを預かってください。放課後まで、お願いします」
疑問符を浮かべつつ担任はギターを受け取った。
「お前のか?・・・・・・ふーん。ギターやってたんだな。まあ、わかった、預かろう」
飛鳥は礼を言い職員室を出た。やはり先生には良い印象を抱かなかった。と同時に今に、と反骨精神が沸いくる。 彼女は教室に行き、扉を開けた。
誰もいずに静寂が横たわっていた。
椅子を引くとこすれる音が大きく響いた。彼女は勉強を始めた。
遠くで金属の甲高い音がした。野球部が朝練をしている。
教室にはシャー芯が擦れ削れていく音だけが漂っている。彼女は暫く勉強を続けた。
数十分がたち、がらがら扉が開いた。例の三人組だ。
「おっ、早いっすね飛鳥さん。勉強っすか。いやぁ偉いっすよ」
三人組は飛鳥に近づいた。笑みを浮かべている。飛鳥は黙々と勉強を続ける。 「俺には真似できないなあ。やっぱテストで平均点取るにはそれくらいしないと駄目なんですかね?」
じわじわと沸いてきた嫌な感情が心に染みていき、飛鳥はシャーペンを握る手の力を強めた。
「飛鳥さん。数学なんか楽勝でしょ?英語がいいっすよ。理系なんだし」
一人が鞄から単語帳を取り出した。
「そうですよ、やりましょう、飛鳥さん」
飛鳥はいつもの如く黙ってようとした。苦痛だし息苦しさも感じた。昨日からますます辛くなって放課後を切望する。
また扉が開き、女子が数人入ってきた。
「おはよ飛鳥ぁ。なに勉強?偉いねぇ」
悪戯な笑みを浮かべ一人の女子が近づいてきた。
彼女は飛鳥が無視すると見るやむっとし、露骨に嫌悪感を浮かべた。
「わっ、無視とか何?友達が来たんだからこっち向けよ」
がっと飛鳥の肩をつかみ正面を向かせた。
「村谷くんたちもしかとされてんの?」
「まあ、しかとっつうか、なんつうか飛鳥さんは偉大だし俺らなんか眼中にないのかも。ま、仕方ねぇ。な、飛鳥さん」
朝から面倒な取り合わせだった。わずかに下を向き仏頂面の飛鳥は惨めに映ったことだろう。何回も扉が開くなかで飛鳥を嘲笑混じりに見るものは多かった。 「は?なにそれ。前から気になってたけど、同級生に敬語とかさ、何なの?」 とがった口調で責めるように飛鳥を睨む。
「いやいや、飛鳥さんは悪くないって紗江。止めろよ」
よくこんな茶番ができるものだと飛鳥は思った。
いつもの如く侮蔑や嘲笑といったものが隠れているのだ。
「ま、村谷君が言うなら別にいいけど。」
 紗江は飛鳥から目をはずし単語帳を見た。
「何で単語帳持ってんの?」
飛鳥は紗江の仏頂面が微かな笑みを帯びたように見えた。
作品名:Rock Against Damn mind 作家名:東雲大地