「哀の川」 第三十話
吉井は、雰囲気が似ているからそう感じたのだが、良く観ると少し違うような気がしてきた。
「そう言われますと、少し違うように感じますね。先ほどは似てらっしゃると感じたのに、不思議ですわ」
「他人も趣味とか考え方とかが近くて、一緒にいると似てくるって言いますよね。まして成長期の由佳さんだったから、そう見えるようになったのかも知れませんね」
「とにかく、若くて綺麗なお母様と、色白の可愛いお嬢様にご入会して頂き、これからが楽しみですわ。私のレッスンはジャズダンスを通じて、女として綺麗になること、そしていつまでも若くいられる身体作りをすることにあります。基本からゆっくりと作って行きますので、飽きずに頑張って下さいね。今からレッスンしますので、お入り下さい」
トレーニングウェアーを借りて着替えを済まし、二人は生徒に加わって後ろの方で言われるとおりに身体を動かした。麻子はダンスを長年してきたので飲み込みが良く、身体も柔らかいことを褒められた。由佳はこれからなのでストレッチの基本をみっちりすることになった。汗を流して、着替え、帰り道にご飯前だというのに甘いものを食べに喫茶店へ入った。女性はこれが楽しみなのだ。わいわい言いながら、大きなケーキを食べて、これじゃダイエットにはならないわね!と笑い合っていた。
作品名:「哀の川」 第三十話 作家名:てっしゅう