小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
マナーモード
マナーモード
novelistID. 29058
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

郷愁

INDEX|13ページ/13ページ|

前のページ
 

「母が笠山さんを知ってる、って云っていたんです。笠山さんの作品は全部読んだのに、処女作だけを読みそこなったって、何度も云ってました」
 笠山は美貴を昔から知っているような錯覚をしそうだと思う。確かに似ている。
「そうですか。でも、暗い話でしたからね、読んでもらわなかったことは正解だったと思っています。お母さんは、お元気ですか?」
「去年、亡くなりました。癌で……」
 微かに聴き取れる声で美貴は応えた。
「……亡くなりましたか。お母さんは山科みどりさん、というお名前でした?」
「それは旧姓です。坂本みどりという名前でした」
「なるほど、あなたは坂本美貴というお名前でしたね」
 目の前で涙ぐんでいる美貴は二十三だった。自分に子供があればもっと気持ちが老いたかも知れないと、笠山は思った。それから、何日か前に覚えた郷愁のようなものは、美貴の顔を見たからかも知れないと思った。


                了
 





 

 
 





 

 
 












作品名:郷愁 作家名:マナーモード