郷愁
郷愁
笠山慎之介の家は高台の一軒家で、周囲は農地となっている。一見普通の家に見えるのだが、実は異常事態に陥っていた。笠山が半月程旅行をして帰宅したその日、意表を突く事実が明らかとなった。
家の南側の本来の玄関に異常はなかった。従来の鍵を使ってドアを開け、普通に中に入ることができた。しかし、玄関の奥に本来は二階のリビングに置かれていたサイドボードが移動されて来ており、そのためにトイレにも風呂にも入れないという状態になっていた。一階の各部屋にも、厨房にも、同様の変化が認められた。更に驚かされたことは、階段がなくなって登り口だったところが壁になっていることだった。
旅行から戻った当初から、異変には気付いていた。彼の家の周囲には、材木の切れ端などが散見され、庭にはトラックのものと思われるタイヤ痕があった。そして、家の周囲を見て回ると、驚いたことに玄関が増えていた。旅行中に彼の家が二世帯住宅に改築されていたのである。