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アイラブ桐生 第4部 44~46

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 お千代さんの友禅染は、
その下絵を描くところから作業は始まります。
生地を湯のしした後、模様の柄を合わせるために仮縫いをした白生地に、
絵筆を使って青花(おいばな)と言う液をつけて下書をします。



 着物という凹凸のあるものに書くには、毛先の柔らかい筆が一番です。
掠れたり、滲んでしまうために一定の細い線が書けるようになるまでには、
長い年月と、高度な熟練とコツを必要とします。
青花液は、紫つゆ草という植物から抽出をした液のことで、
水を通すと消えてしまうという性質をもっています。
したがって友禅が染め上がった時に、この下絵の線は消えてなくなります。



 つぎに「糸目糊置き」と呼ばれる糊置きの作業にすすみます
下絵の線の上に、糸目のりと呼ばれる細い糊を、
模様に沿って置いていきます。
色押し(友禅)をするときに外にはみ出さないようにするためのもので、
きわめて丁寧な仕事が求められます。
防染の役目をするもので、
モチ米の粉、糠、塩、石灰などに熱湯を加えて混ぜ、
長時間蒸したものが使われています。


 まだまだこの先にも染色前の、下準備がつづきます。
次も前工程で「地入れ」です。
糸目のりを生地にしっかり食い込ませるために、
ふのりとゴ汁を入れた水を刷毛で塗ります。
ゴ汁とは、大豆を一晩ふやかしてすりつぶしたもののことです。
染色時の発色をよくするために用いられています。
こうした生地への下準備を施してから、ようやく色挿し(友禅染め)
作業にとりかかります。



 まずは、色作りからはじまります。
初めに、白となる胡粉を溶きます。
つぎに、反物の地色や目指す基調に合わせて染料を混ぜ、
朱、黄、青、紫、黒などのそれぞれに基本となる5色を作ります。
基本色ができたら、そのそれぞれに三段階の濃淡色を作っていきます。
すべての色に、糸目のりの外にはみ出さないように
カゼインなどの色止めを加えます。
ここまでがすべて、下ごしらえとその準備工程です。


 友禅染めには、きわめて複雑で繊細な工程がいくつも存在をします。
そのために、工程別に分業化をされ効率化を図っている
工房などもたくさんあります。
しかしカキツバタを得意とするお千代さんは、
こうした膨大な行程のすべてを、黙々と一人でこなします。