アイラブ桐生 第4部 44~46
「この時期定例の、秋の総入れ替えだよ。
今までいた連中は、忙しくなるこの時期を避けて、
また冬になると戻ってくるのさ。
4年間もそれを、延々と繰り返しているつわものの学生さんもいるよ。
なあに、心配などにはおよびません
あふれるほどの、新規の学生バイトたちが
明日から、わんさかと押しかけてきますから・・・」
なるほど、まかないのおばさんが言っていた通りでした。
この日から連日、求人広告を見た学生たちが続々と
ホテルへ面接にやってきました。
実は、忙しくなるこの時期になると、ホテル側も通常の2割増しの時給で
学生たちを優遇するのです。確かに群がってくるはずです。
人事課から、呼びだされました。
用件はふたつです。
ひとつは時給のアップで、あとは主任手当も
支給されることになったそうです。
ついでに3階に一部屋があいたので、そこを個室として
使えとして当てがわれました。
この間までの待遇から見れば、まったくもって破格といえる処遇です。
別に仕事ぶりを、ホテル側に評価されたわけではありません。
これには裏がありました。つい先日のことです。
マネージャーとフロント係の女の子が、ラブホテルと思われる場所から、
(日中だと言うのに)連れだって出てくるところへ、
偶然にも遭遇をしてしまいました。
いつもの木屋町通りから、一本だけ裏路地へ入った通りです。
フロントの女の子は顔をそむけてしまいましたが、
マネージャーの驚いた顔とはま正面から、
ものの見事に鉢合わせをしてしまいました。
誤魔化し様がありませんので、こちらもおもわず会釈をしてしまいました。
あとはご想像の通りです・・・
部屋を引っ越して、のんびり過ごせる環境になったとたんに、
夏が過ぎ去り、修学旅行が押しかけてくるホテルの
「掻き入れ時期」に入りました。
本館とともにすぐ近くにある西館まで使って、
連日の満員御礼が続くようになりました。
大広間や宴会場にも、『いざという時のために』
大量の布団が準備されるようになりました。
いったい日本には、どのくらいの修学旅行生がいるのでしょう、
そのすべてが、否が応でも京都に集まってくる勢いです・・・・
作品名:アイラブ桐生 第4部 44~46 作家名:落合順平