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アイラブ桐生 第4部 44~46

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 お千代さんの工房では、友禅染の工程がつづいています。


 いよいよメインとなる「色挿し」です。
全部で30色ほどになる色を、地色や絵柄に合わせながら
布地に挿していきます。
色の強弱、濃淡、明暗のバランスなどを考えながら、はみ出ないように、
むらにならないように、挿し落としなどが無いように丹念に挿していきます。

 ぼかしも大切な作業のひとつです。
『カタハ』という毛足が斜めになっている小さな刷毛で、
毛足の長いほうに色をつけてぼかします。
まるで知恵の輪のような作業の繰り返しですが、
染め上がった時のことを想像しながら
色を挿すのは最も楽しく、また、もっとも苦しく、
もっともドキドキとする、・・・・そんな工程だと、
お千代さんは笑います


 このあとに施すのが、から蒸しと呼ばれる工程です。
染めた色を生地に定着させるために、
蒸気で40~60分ほどかけて蒸しあげます。
ここまでが、白地の上での作業です。
染色(色挿し)が済み、白地の残った部分へ、
今度は地の色をいれていく作業が待っています。


 「のり伏せ」は、色挿した部分にふせ糊を置いて
地色を染める時に、地色が入らないようにするための工夫です。
「そめ地入れ」では、ふのりとゴ汁をいれた水を、
生地全体へむらかく刷り込んでいきます。
伏せ糊を生地に食い込ませるようにするためと、地色をムラなく、
綺麗に染まるようにするために、この行程は欠かせません。



 「地染め」は、地色を刷毛で全体に塗りつける作業です。
長い生地をムラなく平らに染めあげるためには、
長い熟練した技術を必要とします。
わざとぼかして染めたり、ムラに染めあげることもあります。
模様と生地のすべてに染色を施した後、生地を再び蒸しあげます。
さらに水にさらして、伏せ糊や糸目のりを綺麗に洗い流して、
京う友禅の一連の作業は終了します。



 こうして水洗いしてかわいた生地に
金線や砂子、切り箔、などの装飾が追加されて、
最終的に雅な京友禅が仕上ります。
こうしてできあがった反物に、さらに刺繍などを施して仕立てあげると
訪問着や、留袖、振袖などといった高価な完成品に変わります。
京友禅は、高度な熟練と複雑な工程から生まれてくる、
職人たちによる雅な工芸品の世界です。



 でも、あたし自体はそれほど、雅(みやび)には縁がありませんと、
今日もにっこりと笑っているお千代さんです。