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東西シリーズ

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猪狩朱世さんのご実家は1


容姿端麗、頭脳明晰、人並みにおしゃれに興味があって、人並みに夜更かしが好きで、基本的には裸眼だけど、たまにメガネ。
そんな猪狩朱世さんには、千人の舎弟がいました。


西の猪狩(いかり)―悪代官や独裁者、その時代の悪しき為政者を陰ながら葬ってきた正義の極道的なにか。全国に散らばった構成員は三桁を超え、表向きはただのチンピラ集団だが,血の気の多い彼らを纏め上げるのが、猪狩家である。
猪狩家は、名前の通りイノシシと縁があり、そもそもの一族の始まりは、猪神ととある娘の婚姻だった―という話があるかはともかく、猪狩家は代々イノシシを使役し、その家業に活かしてきた。それは現代でも同じ、猪狩の名字を持つ人間は、最低でも2匹、自分の相棒となるイノシシを飼っていた。
そんな猪狩家に、激震走る。
コトの発端は長女であり、次期組長でもある朱世の一言だった。


「私、家を出ようと思って」
朝、にしてはまったりとした食事時に、朱世が豆乳を飲みながら言った。
この朱世お嬢、現在高校3年生で、来年は大学生になろうかというれっきとした受験生だったのである。
「朱世ちゃん、地元の大学を受けたんじゃ……」
父にコーヒーを淹れていた母が、おそるおそる言った。3年生になったときの三者面談でも、受験目前の三者面談でも、朱世は担任の勧めに異論なく、実家から通える国公立大学を第一志望にしていた。もちろん、学力的にも問題はない。
「そのつもりだったけど、中央の大学を受けたの」
マグカップをテーブルに置き、トーストに手を伸ばした。たーっぷりの自家製マーマレードに、丁度いい塩みのバター。うん、美味しい。美味しいんだけど。
「中央?中央って!」
「ええ、セントラル・マリオの治める中央よ」
“西の”猪狩と称される猪狩家は、この県の西一帯を統括していた。西や北に巨大勢力が鎮座するこの県だが、それらの干渉を受けず中立を保っている真ん中の都市を“セントラル”と呼び、県の重要機関は全てそこに集結していた。その全管理をまかされているのがセントラル・マリオという存在である。まぁそこら辺の話はまたいつか。
兎にも角にも、セントラルは西の勢力の及ばない、アウェイだった。
作品名:東西シリーズ 作家名:塩出 快