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夜になってから蝶は舞う-DIS:CORD+R面-

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99匹の獣がテーブルを囲む戯れ言


「我々の生存、という至極当然であり単純であり根源的な権利さえも脅かすルールが適用されすでに50年余りが経ちました。
我々はただ、生きてゆく。生きて行きたい。
この欲と呼ぶにはあまりにも慎ましやかな求めさえも断たれるのであれば
すべてに対し、無慈悲に、無節操に、無配慮に、敵意を向けなければならないのです。
即刻に!本会議においてこの法の撤廃を求めます」


静まり返る大会議場。中央に99人が一円となり座ることができる巨大な円卓。
その周りには観客席のような座席が5列、円卓を取り囲むようにある。

ここはルヴァース国際連盟本部公式本会議場。

惑星ルヴァースと呼ばれる世界に於ける正式加盟種族99種の代表が居並ぶ。
準加盟を合わせると333種、このルヴァース国際多種間連盟に加盟している。


「これは我々の種の存亡に関わること。どうかご理解頂きたい」
先ほどから一人声を上げて演説をする者、リヴァーダ族のトップ、シーナス・クローネン女王陛下。
正式加盟99種のうちの1種、リヴァーダ族の代表だ。

「これは50年前の決定事項でありまた現在も変わることはない。
賛成票94。反対票4、棄権1。準加盟に至っては333票が賛成。
まあ準加盟の票は決議には影響しないが・・・しかし、これがすべての結果である。
わかるかね?君達こそ理解するべきである」

円卓より一段高い位置に座す、身体をメタリックな鱗に覆われた長身の男が演説を遮った。
これがこの会議の議長だ。ホーネン族族長。

「では本議会はこれをもって閉会する」
議長はさらに声を大きくして続けた。そしてそこで終了。
静まっていた各々の者達は立ち上がり握手を交わし笑顔を見せ思い思いの声を上げ拍手する者もいる。
リヴァーダ族シーナス・クローネンだけがただ、ただ取り残される。


ルヴァ歴52年6月。
『生命無反応個体に対する輸出入全面禁止法の継続』賛成多数で可決。
50年前に決定し施行されている法。
つまりはいかなる種のモノであっても死体は全面的に輸出入を禁止するという法だ。
死体の輸出入の禁止?と現世に暮らす者にとっては不可思議に聞こえるだろう。

だからこそルヴァース世界とリヴァーダ族の説明をする必要がある。

ルヴァース世界というのは環境的には現世アース世界と極めてよく似た世界であるが、
多くの種がこの世界に存在している。
もちろん現世にも多種多様な生物種が存在しているがルヴァースのソレの多くは
知能が高くそれぞれに文化があり文明を築き歴史を歩み生存圏を築き確立させている。

大きく分類すれば人類種と亜人種と海人種の3つ。
それらが99種と333種。
中には少数種や能力的に低い種も存在しているので一概にすべての種が平等に在り拮抗しているとは言えない。
特にメインとなっている99種の中でもその種の差はある。

その中でとりわけずば抜けて身体的・知能的な能力、
また加えて精神面の強度も高く全種の脅威の対象となっているのがリヴァーダ族だ。
この会議においても面と向かってリヴァーダにモノ申す者は稀だ。
皆、一様に壁面に掲げられた種の紋章や旗をぼんやり眺めたりひたすら出されたドリンクを口にしてお腹をタプタプにしている。

脅威であり触れたくはないがこう全種が一同に会す場所であれば右向け右で事は済ませられる。
リヴァーダはそんな弱々しい多くの意志により孤立している。

そんなリヴァーダ族は蝶の羽を持ちその美しさはそれだけで魅了されてしまう程。
寿命もおよそ300年を超えその長寿から蓄積された経験値は個体単位でも非常に高くあらゆるモノを凌駕する。
他の種の平均寿命が100〜150年前後であることからも単純に2,3倍は生きる。

ルヴァース世界の種の頂点。生態系の頂点に君臨している、と言っても差し支えない。
その種が今、追い込まれていた。

それはあまりにも秀でた能力で脅威の存在であることと引き換えに出生率の低さにある。
全種の中でもトップレベルに繁殖率・出生率が低い。

リヴァーダ族は死体に大量の卵を生みつけ孵化し腐肉を糧として幼体は成長していく。
そして一定の成長度まで行くと幼体同士共食いを始める。
その過程で幼体の体長は飛躍的に大きくなり最終的には1m程になるが
その時には激しい生存競争に勝ち抜いた1体のみしか残らない。
その一体はそのまま固い殻で全身を覆い蛹化する。数ヶ月経て立派な最終形態としての種が誕生する。
この繁殖プロセスが出生率を低下させている。
さらに最終形態まで成長するためにはその死体の状態や幼体状態から成体状態へ向かう時の腐食度合いなど
多くの条件をクリアしなければならない。ただ死体に生めば大きくなる、といったものではない。

リヴァーダという種の脅威的能力はそのプロセスによって培われて行く。

そして忌み嫌われる。
死体を介して生命を誕生させるため戦争や飢餓、疫病が蔓延し
大量の死体が発生すればする程彼らは増えるため古くからこの種が増えることは災厄のひとつと考えられていた。

災厄と共にある種。リヴァーダ。災厄を愛する種。リヴァーダ。災厄を呼び込む種。リヴァーダ。
彼らのキャッチコピーには常に災厄という文字が躍る。
人智では歯止めすら利かせられない恐ろしい出来事を災厄と呼びその化身をリヴァーダ族に
思う存分擦り付けることでどうにか平静を保つ。多くの種がそんな感じだ。


それを今、封じようとしている。


こんな脅威を封じたい種は決まっている。
発案者は人類種。最もその数が多く、活動領域も大きい種だ。
人類種はたったひとつの種ながらその繁殖率の高さとそれに伴う発展スピードによってこの世界でのチカラを誇示している。

彼ら人類種の個体自体に特別大きなチカラはない。
戦えばすぐに多くの種に引き裂かれるだろうし海人種とやり合えばたちまち海に引きづりこまれてなす術もない。
彼らには自力で海を渡り切る能力はおろか、水の中で呼吸することさえ不可能だ。
空も飛べないし巨大な岩を持ち上げる腕力もない。狂暴な身体的武器は皆無だ。
知能は最高レベルではあるが同等の種もいくらかは存在する。特筆することではない。
だが彼らはその知能を策略や謀略に使用することを率先して行うし同族殺し、つまりは人類種同士の争い、殺し合いも平然とやってのける
残虐性と倫理観の無さを持っている。つまりは高い知能を持ちながら、知能の低い畜生並みの行いが可能だ。
そんな種はなかなか他にはない。
脅威の対象であるリヴァーダ族もその繁殖率の低さから同族殺しは最大級の重罪と位置づけている。
そんな重罪を犯した者でさえ死刑に処すこともない。

そして今、もっと欲しくてもっと奪いたいと喚く人類。
だだっ子のようにこの世界を踏み荒らす。
多くの亜人種、海人種を懐柔しリヴァーダの脅威を取り除こうと躍起だ。
この世界を統べるために。



「・・・ふむ・・・昨年よりも賛成票が伸びたな・・・。まあ当たり前か・・・。さて、リヴァーダ族は今何人いるのだね?」
人類種の代表として出席していた白髪の男、人類国家連邦代表のガーリヤ・レヴィン連邦大統領が横の秘書に囁く。