「初体験・希望編」 第二話そして最終回
程なく雄介がやって来た。
「突然すみません。お邪魔します」
「いいのよ、気にしなくて。さあ、上がって」
「おばさん、こんばんわ」
「雄介さん、よく来てくれましたね。こんばんわ、今ご飯のしたくしているから失礼するわ」
「はい、遠慮なく」
「ねえ、雄介・・・何か話があるの?」
「うん・・・いま、佳恵と別れてきた」
「佳恵さんと・・・本当に?」
「本当だよ。梅田で逢って結婚することを話したんだ」
「そうだったの・・・ご両親もきっと複雑な思いになられているでしょうね」
「母親には佳恵に言う前に話して理解してもらえた。まだ小枝子さんに言ってなかったけど・・・親は結婚を受け入れてくれたんだ」
「雄介!その話は・・・本当ね?」
「ああ、うそ言ってどうするの」
「信じていいのね・・・私達一緒になれるということ・・・ウソじゃないのよね?」
「もちろんだよ。俺の事信じられなかったのか?」
「ううん、そうじゃないけどこんなに早くって思わなかったから・・・夢みたい」
「夢じゃないよ。これからは二人でやってゆくんだから。俺のわがままを許してくれた母と佳恵に恥じないようにしないと罰が当たる。
小枝子さんをきっと幸せにする。そしてミドー楽器店と俺の家族、いや俺達の家族を幸せにする。誓うよ」
「雄介・・・あなたと出逢えてこんな幸せなことはない。一生ついてゆくから絶対に幸せになろうね。お母さんこっちに来て!」
台所から手を休めて居間に典子は来た。話をうっすらと聞いていたから、もうすでになみだ目になっていた。
作品名:「初体験・希望編」 第二話そして最終回 作家名:てっしゅう